staccato スタッカート


どうも俺は最近おかしいようだ。栄坂が気になる。それもプールに落ちかけたり痴漢にあったりする栄坂が危なっかしくて仕方ないからだと思う。だから毎日目で追ってしまうんだろう。きっとそうだ。



痴漢騒動の次の日、栄坂がお礼にクッキーをくれた。手作りだというから構えたが、今回はさつきなしで一人で作ったというから安心する。へえ、なかなか美味しいじゃねーか。

「赤司は確認することなしに食べてくれるのに…」

なんて言うから少しいらっときた。赤司がどうとか関係ねーし。



テストが終わった。結果が張り出された。なんと栄坂は学年四位だった。

社会で二点をとったというから俺に匹敵する馬鹿だと思っていたが、やれば出来る子の部類だったと知る。

「赤司先生のおかげだ」

ふふふと笑ってから赤司の教室へ駆けていく。転けろなんて思っていると本当に転けた。(ぴんくだった)



栄坂がバスケ部の練習試合を観に来た。桃井が誘ったらしい。赤司は気にしてない体を装ってはいるが、いつもよりシュートを打ちたがるのでばればれだ。(けっ)

「…すげー!」

試合が終わると、「黄瀬も緑間も青峰もすごいねー!普段馬鹿にしててごめんねー」といつものあの調子で言われた。(馬鹿にしてたのか)「むっちゃんー!かっこよかったー!お菓子あげる!」と紫原も誉められて嬉しそうだ。

赤司には何て言葉をかける?赤司の姿をきょろきょろ探す栄坂を見ながら思った。



プール開きだ。合同授業になるので、赤司やさつき、黄瀬までいる。栄坂は、赤司の水着姿は是非とも見たいが自分のを見られるのは嫌だと言っていた。「おい!桃井のスクミズ姿やべーぞ!」周りの奴らがひそめいているのを流しながら聞く。ああ。確かにさつきはすげーよ。ぼいんぼいんだ。だけど俺はさつきの背に隠れているあいつの方が。「青峰っち、誰見てるんスかー」「誰も見てねー」「栄坂見てたのだよ」緑間殺す!

「ああ、まなっちかー」

「赤司っちがいるから女の子みたいに赤くなって。可愛いスよねー」なんて黄瀬が言った。「…別に可愛くなどないのだよ」俺は何も言わなかった。



プールの授業後、栄坂は鼻息を荒くしていた。

「赤司様の水着姿に私めは鼻血が出そうになりました」

「鍛え上げられた上半身に無防備な小さな果実…!」「きゅっとしたお尻は直視出来ませんでした…嘘です目に焼き付けました」「男子の水着を発案した人、本当にありがとうございました!」と変なスイッチ入ったみたいだ。どん引きである。

「…さすがにキモ過ぎる」
「言っとくけど、私の水着姿見てニヤニヤしてたお前も十分変態だかんな」
「み、見てねー!誰がお前なんか!」
「はーん?どうだか」

バレてた。
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