躊躇いがないのが嬉しかったよ


「ごめんね、待った?」
「待ってない」

走りながらやってきた私を見て、赤司が笑う。私も笑う。頭を撫でられた。途端に、ふにゃんと幸せな気持ちが溢れる。



今日あったことを話ながら並んで歩く。手は繋いでない。右手に持つ傘が互いに邪魔だ。

「緑間がね、赤司の行動パターンを聞いてくるの。今度こそ勝とうとしてるんだ」とか「黄瀬がまた告られてたよ。変に愛想振りまくから面倒なことになるんだよね」とか、私たちの間に話題は尽きない。

「あ、今日調理実習があったんだよ」

鞄からクッキーの袋を取り出した。袋を解いて、一つ取り出す。赤司の口元へ持って行くと、パクッと食べてくれた。

「あれ?…美味しい」
「今回は桃井がいなかったから」

もぐもぐしながら赤司が笑った。私も笑う。水溜まりを避けようとしたとき、赤司に手を引かれていた。赤司は傘を持ちかえてた。

繋がれた手。
- ナノ -