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手駒【前編】

気に入らない。
俺から全てを奪ったこの世界全てが――
過去に囚われるつもりなどないが、結果として同じことなのかもしれない。
俺は過去と、現在に囚われ続けている。
本当の自分に偽って生きて、俺は一体何がしたいのか。そう問い掛けても、答えは見つからない。

学園島のあの出来ごとから、どれだけの月日が経過したのだろう。
4人の王が刃を交えたあの日、俺はまた何かを失った。それが何なのか、答えは未だに見いだせない。
そんなことを考えながら、伏見は誰もいなくなったセプター4の執務室の窓から夜空を見上げていた。

「気に入らない、ですか?」
「……居たんスか」

今の伏見がもう一つ嫌いな物。
それは、何もかもを見透かしている――

宗像礼司。


自分の上司であり、吠舞羅から転身してきた伏見を快く受け入れたこの男は、周防尊と同じ王の器を持つ第四王権者。
感情を表に出すことのない無垢な瞳と、何もかもを見透かすような思考を持つ宗像のことを、伏見はどうしても好きになれない。
元々誰かと群れたり、特定の友だちを持たない伏見だったが、宗像には今までと違った別の感情を抱いていた。

「自分から全てを奪ったこの世界が」
「チッ……」

やはり見透かされている。
心を読まれて、良い思いをする人間など何処にもいないだろう。それを分かっているのに、この男は敢えてそれを言の葉として具現化する。

「どうして此処にいるのかは尋ねないのですか?」
「別に。室長のことだから誰が何処で何をしているのかなんて、全てお見通しなんでしょ」
「そんなことはありません。私だって王である以前に一人のただの人間ですからね」
「ただの人間、ねぇ……」

普通の人間が空を掛け上がったり、空に大きな剣を出したりするかってんだ……

「ところで伏見くん。消灯時間はとっくに過ぎているのですが」
「別に室長には関係ないでしょ。俺が何処で何をしてようと。もう、ガキじゃない」

その言葉を発した刹那。間違いなくその場の空気が変わった。
今の自分の発言が宗像の怒りをかったと認識していたが、上司と部下の関係にもプライベートという物がある。プライベートの時間まで拘束されるなど堪ったものではない。

「分かりました。寮の自室に戻ります」
「…………」
「規則を破って、すいませんでしたー」

頭を下げ、伏見は執務室のドアへ足を向ける。

「確かに、貴方は子供ではありません。此処に来た時から」

想像もしていなかった言葉に伏見は足を止め、宗像の方を顧みようと振りかえったその時――

ドンッ――!!

宗像の姿が目の前に迫っていた。
壁に手を付き、伏見が逃げられないよう行く手を阻む。

「…………、あの…近いんっすけど……」
「もう一度言いますが、私は貴方を子どもとして認識したことなど一度もありません」

ヤバイ……そう思っても、時すでに遅し。
顔は笑っているが、眼が本気だ。

「そう…っすか……」

一刻も早くこの場から逃れないと、間違いなく身が持たない……

「手、退けてもらえませんか?部屋に戻るんで」
「急がなくてもいいでしょう。伏見くんは明日遅番なのですから」

顎を掴まれ、顔を上へと向かされる。
何故だかは分からないが、眼鏡の奥にある冷徹な瞳から眼を離すことが出来ない。

「さて、伏見くん。場所を変えましょうか。君には1から教え込まなくてはならないようです。貴方はこの宗像礼司の何なのかを――」


◆◇

この状態になってから、どれだけの時間が経過しただろうか。最低でも、一時間以上は経過しているはずだが、それを確証付ける術が何もない。

「っ……ああぁ…」
「訂正する気になりましたか?伏見君」

早く楽になりたい。早く、この状況から解放されたい。そう何度も心の中で伏見は呟き続けてた。

「どれだけ大きな声で泣き叫んで貰っても構いませんよ。私と一緒でなければこの場所へ誰も足を踏み入れることは出来ませんので」

王の力を持つ人間踏み入れることが出来ない場所。それがセプター4内部にもあるなんて迂闊だった。
だが……自由を奪われ、局部を露わにしているこの状態を他の誰にも見られずにすむことに関しては、申し分ない。
しかし、この状況については文句三つや四つぐらい簡単に吐くことが出来る。

「し……室長にっ、こんな趣味がっ…あったなんて……意外っすね………くっ…!!」
「そうですか?そう言っている伏見くんもこの状況に相当体は興奮して、感じているようですが……君にはマゾヒストの才能があると思いますよ」

そんな才能があっても、ちっとも嬉しくない。
そう叫んでやりたがったが、叫んだところでこの状況が変わるわけでもない。
天井から伸びる縄で手を後ろ手に拘束され、足を閉じることが出来ないようM字に拘束され、体を吊るされているこの状況が……

「そろそろ素直になってはどうですか?」
「くっ……んっ、やめっ……ああああっ!!」

アナルに突き刺さるバイブが突然動き始め、内壁を擦り上げる快感に伏見は喘ぎ声を上げる。
初めてなら違和感と苦痛しか感じないのだろうが、既に伏見の身体は宗像の手によって隅々まで開発されている。何も感じないでいる方が無理難題だ。

「聞こえますか?この音が」

グチュッ……、クチュ…グッチュ――!!

バイブが抜き差しされる度、アナルから厭らしい水音が否応なく聞こえてくる。
聞きたくないと耳を塞ぎたくても手を縛められている為、耳を塞ぐとが出来ない。喘ぎ声を漏らすまいと、伏見は唇をギュッときつく噛み締め耐え凌ぐ。
そんな伏見の態度に宗像は次の一手を差し向ける。

「いいっ……!?いああああっ……ヒッ、ひあぁあぁっ!!」

引き抜かれかけていたバイブが、勢いよく最奥へ押し込まれる。その振動と衝撃に伏見は、悲鳴のような声を上げた。

イキたい……

「外して欲しいですか?コレ」

大きく反り返り今にも射精しそうなペニスだが、射精することが出来ないでいた。何故なら、伏見のペニスには宗像の手によってコックリングが施されていて、射精したくともプラグが尿道に刺さっている為、達することが出来ない状態にされているのだった。


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