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前編

プレゼントを貰って嫌な思いをする人はいない。確かにそうなのだが、例外もある。例えば、使い様のないものや、置き場に困るもの。その他に趣味が異なるもの等が当て嵌まる。

その例外とやらに伏見は遭遇していた。上司である宗像から渡す物があるからと、仕事帰りに自宅へ呼ばれプレゼントを手渡された。

「……何ですか?コレ…」
「何って、私からのプレゼントですよ。伏見くん」

そんなこと見ればわかる。
伏見は心の中でそう呟くと、頭の中で様々な思考を巡らせる。今日は誕生日でもなければ、何か特別な日でもない。自分が宗像からプレゼントを渡される理由に皆目見当もつかない。
大きさや重さから推測するにそこまで大きなものではないようだ。

「よければ開けてみて下さい」

許しがない限り開けるのは止しておこうと決めていたが、宗像の許しが出た以上開けないわけにもいかない。「じゃぁ、失礼します」と一言添え、伏見は包装紙を丁寧に剥がしていく。包装紙を全て取り除くと、黒い箱が姿を見せた。宗像を仰ぎ見ると手で「どうぞ」と促され、伏見は箱の蓋を開けた。すると中には赤い色の首輪が収められていた。

「……室長」
「何ですか?伏見くん」
「俺、ペット飼ってないですけど……」

セプター4に入り宗像の直属の部下になるまで、またなってからも一度も自分がペットを飼っていると話した覚えがない。それに生まれてから一度たりとて生き物を飼いたいと思った事がない。

「ええ、それは把握しています」

知ってるなら尚のこと、宗像の真意が読めない。
と言うより、知っているならもっと別の物をくれたっていいじゃないかとさえ思う。

「じゃぁ、何でこんなの俺にくれるんですか……」

呆れたような口調で呟く伏見に対し、宗像はその首輪を手に取り持ち上げて見せる。

「ですから、これは私から伏見くんへのプレゼントですよ」

言っている意味が分からない。人外に使用する物をプレゼントだと言って貰っても嬉しくも何ともない。
思わず伏見は小さな溜息を漏らす。

「ん?」

首元に違和感を覚え、伏見は頭を上げる。するとそこには首元に手を伸ばしている宗像の姿があった。嫌な予感がし急いで視線を自身の首元へ落とす。

「よく似合っていますよ。やはり赤にして正解でしたね」

嫌な予感は的中し、伏見の首元には宗像からのプレゼントとして貰った首輪が施されていた。

「し……室長ーーっ?」

怒気を含んだ口調で声を上げる伏見だが、そんなことお構いなしとばかりに、自分の目の前にいる人間は満面の笑みを浮かべている。

「こうしてみると犬のようですね」
「……、外して貰えますか…」

誰が犬だっ!!そう言い返してやりたかったが伏見は言葉にせず飲み込んだ。
自分の手で外すことなど容易いことなのだが、お伺いを立てておかなければ後々が面倒なことになる。何せ相手が相手だ。怒りを買うこ言動はなるべく避けたい。
今思えば、最初からおかしかった。
渡したいものがあるので自宅に寄って欲しいと声を掛けられたあの瞬間から。毎日顔を合わせているのだから、何時でも渡すことが出来る。にも関わらずわざわざ自宅に招き渡そうとするなど変ではないか?伏見は過去の自分の迂闊さを呪った。





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