ヨハン#欲のままに犯す | ナノ
白い腕を床に縫い付けて、見下ろした彼女の顔は恐怖に引きつっていた。まるで化け物でも見るような視線だった。ありえない、誰が見てもそう言いたげな表情で、もともと白い肌から血の気がどんどん引いていって、最終的には青白く染まった。俺は心の奥底からその姿を美しいと思った。まるで彼女の肌は石灰の彫刻のように滑らかで艶やかで、それに対して薄桃色の唇が余計に際立って、とてもとても美味しそうだったのだ。それにかじりついたなら、どんなに甘美な味わいが襲い来るのだろうと背筋が打ち震えた。彼女の両の手首を頭上で力強く固定し、空いたもう一つの手で彼女の顎を口付けしやすいように持ち上げる。上にのし掛かられ腕を拘束されもうどうにもできないと悟った彼女の絶望の表情は、俺の情欲を余計に煽った。夢中で口付けた。唇に吸い付き舌を絡ませ呼吸を飲み込む。彼女は苦しそうにくぐもった喘ぎを零した。このまま窒息死してしまえばいいのになんて考えた。それから彼女の服を乱暴に脱がせ、いや力任せに引きちぎりという表現の方が正しい。あとは無理矢理突っ込んで、欲望のままに腰を振った。最高だった。俺の腰の動きに合わせてあっあっと彼女が喘ぐんだ。俺が啼かせてるのだ。堪らない征服感。何度も何度も吐精を繰り返し、気がついた時には彼女は気を失いぐったりとしてまるで人形のように成り果てていた。


やりすぎてしまったね、ユベルが耳元で囁き笑う声に、俺は目を覚ました。


嫌な夢を見た。冷や汗が額、首筋、背中を伝っていく。息が苦しくて、鼓動が高鳴っていた。周りを見渡すがこの部屋には俺以外誰もいない、あのユベルの囁きも、夢、か。夢なんて言っても、あの光景は現実であったことだ。ユベルに身体と意識を乗っ取られ、俺という意識が俺の身体を支配できなくなっていたとき、彼女は俺を探して俺のもとにたどり着いたらしい。らしいというのは俺という意識が彼女とそういうやりとりすることがなかったからだ。ユベルの君の欲望を叶えてあげる、そんな囁きが聞こえたと思ったら俺の意識は身体に戻され、開けた視界に広がったのは彼女を組み敷いている状況だった。俺が想像の中でしか出来なかったことが、今目の前に、用意されていたのだ。そんな状況に、理性は遠く彼方に蹴り飛ばされ、俺は何度も何度も、彼女を犯し尽くしたのだ。ユベルに誘導されたこともあるが、紛れもなく自身の意思で彼女を犯したのだ。やりすぎてしまったね、荒い呼吸で呆然とする俺に対してユベルはそう吐き捨てたのだ。

異次元の出来事が全てが終わり、俺がユベルから解放された今、彼女はあの時のことを俺の意思ではないと信じ込んでいる。乗っ取られていて、どうしようも出来ないことだったのだ、と。ヨハンがあんなことするはずないもの、と。俺を人格者と信じ切っている彼女に、絶望にも似た感情が波のように襲いかかった。かねてからあんなことを頭の中で描いていたのだ、意識を戻された時彼女を助けるという選択肢を選ばなかったのは俺の本心だったからだ、そんな俺を信じ切っている彼女、笑うしかなかったね。

今でもこんな夢を見て、思い出しては情欲に襲われる。出来ることならもう一度彼女を喘がせたいと考えることがある。現に今、あの夢に魘されつつも己を猛らせているのだから。

俺はあと何度あの夢を見て、何度欲情し、何度1人で虚しく果てるのだろうか。ベッドの上で頭を抱え込んだ。考えたところで頭の中で、彼女の信頼を裏切り彼女に腰を振る自分の光景が浮かんだ。はは、解放されるのは自分の欲望を満たした時ってか、笑えるね。

20160422
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