遊星#変態 | ナノ
下ネタ

最悪だった。なんで自転車でちょっと買い出しに出ているだけの短い時間の間にこんなに雨が降りだすのか訳がわからない。生憎ゾラの家を出たときは雨は降っていなくむしろ夕空がきれいに広がっていたくらいだったから傘なんて持っているわけもない。スーパーで会計も済ませてしまっていたからまたビニール傘を買うのもなんだかめんどくさくて私は諦めて雨に濡れながら帰ることにした。最悪だよ。だってじゃんけんに負けてジャックとクロウと遊星の分のご飯を買いに行かなくちゃいけなくなった上にこの雨と言う仕打ち。神様は敗者に優しくないな。夕空で労ってくれてもいいのにさ。レジ袋は濡れても中の食べ物は濡れないからまあいっかと乱暴にかごへと投げ入れればぐしゃっと音がしたけど気にしない。どうせジャックのサンドイッチだろうから。そしてサドルに跨がり気合いを入れる。気合いでも入れなきゃこんな雨の中やってらんないよ。


「スピードの世界をなめるなよ!ライディングデュエル、アクセラレーショォォォン!」


叫んだのは良いけれどあたりの買い物帰りの奥様方に怪しい目で見られたのは言うまでもない。ずっと私のターン!でやっと帰ってこれたときには雨どころか雷までなっていた。この雨の中あのテンションのまま走り続けた私を自分で誉めてやりたい。髪の毛やら服やらから雨水を滴らせながらかごに突っ込んでいたレジ袋を覗き込んだら中の食べ物は無事だった。やっぱり突っ込んだ衝撃でジャックのサンドイッチは若干潰れていたけど気にしない気にしない気にしたら負けだと思ってる。


「ただいまぶへえ!」


言っておこう、ただいまぶへえと言うのはただの悲鳴であってこれが帰りの挨拶というわけではない断じて。悲鳴にも聞こえないとか言うんじゃないよ女らしくないのは私がいちばんわかってるもの!


「ゆっ、遊星、痛い。お帰りの代わりにタックルかますとかやるなお前」
「い、いや、ちがうんだ。悪かった…」


ドアを開けて思いっきりぶつかってきた遊星はどこかおろおろしたように瞳を泳がせていた。どうしたの、チャックに皮でも挟んだのか、とか言ったらそんなわけないと思いっきり怒鳴られてビビった。冗談じゃないか、遊星がこんな大声だしたの久々に聞いた気がしてしかもその言葉がこんなんだからなんか…悲しくなった。ごめんよ遊星。てかどうしたんだろうかいきなり飛び出してくるようなことがあったのか、と思い尋ねてみようかとしたら雷雲から雷が突き落ちた。思わずうおう!なんて声を出してしまった私は重症だが、遊星のほうはもっと重症だった。なんせ震えながら私にしがみついてきたんだもの。そうか、遊星が飛び出してきたのは雷のせいなのか。…いやいやいや!遊星が雷に脅えるとかちょっと笑える。でも笑い出してばかにしちゃえばきっと口を聞いてもらえなくなるから我慢しておこう。とりあえず遊星を落ち着かせようか。


「遊星、大丈夫だから雷怖くないよ」
「こ、怖がってなんかない…!」
(いやいや、めっちゃビビってんじゃん!)


なんかたまにはこんな遊星もいいなあとか考えながら私より背の高い彼の頭を撫でてるのってはた目から見たらアンバランスなんだろうと思った。つかジャックやクロウに見られたら引かれるか笑われるかのどっちかだよね。あれ、意外とこれってピンチな状態だったりするのか?今思い出したけど、私雨に濡れて服がベタベタだから物凄く気色悪いんだよね。オマケに遊星を抱き留めてるから余計にくっついて気色悪い。少しだけ遊星に離れてもらおうと撫でていた手を退ければ、その手は遊星によって捕らえられた。見上げた遊星のその瞳には先ほどの雷への恐怖はどこかへ行っていていつの間にか高揚としていた。待て、まさかこいつ、私が思い出したように雨に濡れている私に気がついて…


「…悪い、勃った」
「さっきの雷に脅える純粋遊星はどこ行った?!」
--------------
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -