ヘルカイザー#彼のデッキ | ナノ
亮と出会ったのは、彼がデュエルアカデミアに入る以前のことだった。出会ったときから彼は、私をキラキラと希望に満ちた瞳で見つめていた。いつだって亮はデュエルをとても楽しそうにしていて、デュエルに対して心をときめかせていて、私は彼と高みへと挑み続けるのがとても楽しかった。片時も彼は私を離すことなくとても大切にしてくれて、私にとっても彼はかけがえのない存在であった。

彼が望むのならば私はなんだってした。

相手をリスペクトするデュエルだって、勝利を掴み取るだけの道具にだって。師を、仲間を、弟を、傷つけるデュエルだって。どんなときも彼が挫けそうなときも、私は彼の味方でなくてはならないのだから。それが、私が彼にしてあげられるたった一つのことなのだから。デュエルに対する信念が捩曲がろうとも、彼が自分を傷つけるようなことをしようとも、それが彼の望む道ならば、私は彼の背中を押すのだ。私だけはともにいるのだと、彼の進む道を切り開くのだ。

これでいいのか、なんて考えること、いっぱいあった。

亮とずっとともにいるのだから、彼がなにを考え、どこに向かおうとしているかなんて、聞かなくてもわかってしまった。異次元に飛ばされてしまいこの地に辿り着いたとき、彼はやっと求めていたものを見つけた、そんな顔をしていた。彼の命がどんどん削られていくのが感じられた。それでもいい、それがいい、彼は口にしなくとも、そんな風に思っていたのだろう。私はそんな彼をとめるどころか、寧ろそれを加速させる要因として在った。

私が、彼を殺すのだ。

立ち向かうは黒い笑みを浮かべるヨハンアンデルセン。彼とは一度対峙したことがある。あのときの姿とは全く異なっていて、カードもプレイングも。そしてぶつかり合ったとき、とても哀しい気持ちがした。彼も何かを抱えて苦しんでいるのだと、なんとなくそんな感じがした。一枚、また一枚、亮が私をドローする度、彼の指の震えが伝わってきた。これでいいの?なんて彼に問いかけることはできない、だって私は彼のデッキなのだから。

それから、彼は負けたのだ。

全てを出し切り敗北した亮は、とても満足そうに、そして苦しそうに笑っていた。まるでありがとうとさようならを告げるようなその表情に、消えないで、と心から思った。

ーーーデュエルで死ねるのならば、本望だ

デュエルに挑む前、彼がそう口にしていたのを思い出した。最期の瞬間を私とともにいることを選んでくれたのだ。とても、とても私は彼に愛されていたのだ。私に触れる彼の体温が薄れて行く。私は、あなたのことが好きだった。どんなあなたでも、好きだった。

願わくは、あなたに安らかな眠りを。

20160416
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