十代#気持ち悪い十代 | ナノ
消しゴムをなくしたことがきっかけだった。授業中にふと使おうと筆箱を探ったが、見当たらなくて、どこかで落としたかなくしたか、心当たりがなかったが消しゴムがない事実は変えようがなく、私の不注意の仕業だと思った。その授業中は隣の席の万丈目の消しゴムを勝手にそして無理やり半分千切り取り難なくすごした。授業中だから声を出せない万丈目の反応はすごかったな。塞がらない口に消しゴム投げ込んでやろうかと思ったよ。それにしても、今まで物をなくしたことがあまりなかったから、心当たりもないし、不思議な出来事だった。

それから、新しい消しゴムを購買で買って数日したときだ、今度はシャープペンシルが消えた。明日香とお揃いのシャープペンシルで、いつも大事に使っていたし、どこかに置き忘れたとか、落としたとか、絶対にないはずなのに、それは消えてしまった。確かに昨日まではそこにしまわれていたのだ、それなのになくなるなんて。頭をよぎった考えに、明日香がなんとなしに気が付いたのか、きっと筆箱がきちんとしまってないうちに落としてしまったかもしれないわ、またお揃いのものを買いなおしましょう、と笑って言った。悔しかった。明日香とお揃いの大切なものをなくしたこともだが、彼女にそんな気を使わせてしまったことに。

それから疑惑が確信に変わるのには時間がかからなかった。
体操服が、なくなったのだ。いくら探しても持ってきたはずの体操服がない。ないのだ。なぜ、どうして。これは確実に誰かが持ち去った以外考えられない。それにしてもわからない。持ち去ったことがすぐわかるようなタイミングで消えてしまったのだから。体操服が欲しいのなら、ばれないやり方をすればいいのに、犯人は馬鹿なのかアホなのか、意図がわからない。頭の中ではこう毒吐いてはいるものの、最近わたしの周りを取り巻く状況が不気味で怖くて、呆然とするしかなかった。いつもは意地悪な万丈目も流石に私に気を使って励ましてくれるし、翔君は犯人探しに乗り出したくれた。そして明日香はなかなか寝付けない私のそばにずっと居てくれた。

次はなにがとられるんだろう、制服姿で校庭の片隅で体育座りをし、みんなの体育をぼんやり見つめた。体操服がないものだから、しばらくの間は体育は見学だ。体操服が新しく用意できてもこんな気分じゃ運動なんてする気にならない。やっぱり明日香とお揃いのシャープペンシルがなくなったのも、私の不注意ではなくて誰かの意図的なものだったのだろうなと思った。たぶん、消しゴムも、だ。もしかして、私、虐められてる?そんな考えに涙がじんわりと滲んできたとき、十代が現れたのだ。私の隣にどかっと座り込み、ニカッと笑い、それから気を落とすなよって言った。私の肩を抱き、そのうち出てくるだろうし犯人も捕まるって、と彼は言う。とても力強い言葉で彼は私の落ち込んだ心を引き上げた。安心のせいか滲み出た涙は引っ込むのではなく零れ落ちて、十代は私の姿を見て慌て出した。ごめん励ましのおかげで気が緩んじゃって。どうしようと止まらないし拭くものがない。十代も同じことを考えていたのか、レッド寮がすぐそこだから行こう、タオル一枚くらいはある、と私の手を引いてやや強引に立ち上がらせこれまた強引にレッド寮へと連れられた。はじめてきたけどなんていうかレッド寮は、…なかなか味のある創りをしている。そして十代の部屋は、…とても、とても散らかっていた。ちょっと待ってろよ、といって彼は部屋の奥でごそごそと探り出した。そんなに奥にあるのかしら。涙はもう止んでしまったが、頬を濡れる感覚が気持ち悪い。おとなしく彼が探り当てるのを待っていよう、そう思ったとき、散らかったものの中になにか、なにか気になるものがあったのだ。何処かで見たことがあるような、既視感とでも言うのだろうか。なにかフタのあきかけの箱がベッドの下のスペースにしまわれていて、そのあいている隙間から覗いているものが、見覚えがある。なんだっけ、と思いながら恐る恐る少しだけそのあきかけのフタを、ずらした。

体操服、女子の。

思わず後ずさり。呼吸が、できない。一歩下がったら何かを踏んだ、それからバランスを崩して、尻もちをつく。こけた拍子に、私の足が箱を蹴飛ばした。箱が倒れて、足元に転がってくる明日香とお揃いのシャープペンシル。消しゴム。それから、この間、新しいのを買ったから、デザインの古くなった下着を捨てた。ゴミ袋奥の奥の奥に入れてあさらないとわからないような捨て方をした、私の下着が、なぜか、ここにあった。


「あちゃあ、バレちゃった」


ついさっき、あなた言ったじゃない、まるで第三者のように私を励ます言葉を。気遣うように肩を抱いたじゃない。当事者のくせして、一体どのツラ下げてそんなことを言えたものか。悪気がまったくない笑顔で、仕草で、彼は笑った。嫌悪と恐怖が胸の中でぐるぐる混ぜ合わされ、それからまた、涙が零れ落ちた。

20160413
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