吹雪#変態的な吹雪 | ナノ
うっ、と口元を押さえた。目の前の吹雪がゲッて顔をしたのが見えた。ちくしょうあからさまな反応しやがって。まあ食事中(お茶会なんだけど)に吐き気を催したような行動を目の前でされたら、当然の反応か。なんて考えながら口元を押さえたまま席を立ち、早足で洗面所に駆け込んだ。うええと咳き込んでみるも喉の奥からなにかが出て来る気配はない。しかしこみ上げてくる不快感はなくならなくて、一体どんな食べ合わせがだめだったかなあとかなんか古いもの食べたっけ?なんて洗面台に首を擡げさせながら考えた。ああ、頭に血が上る。しかしなにも出てこない。諦めて水道で口をゆすぎ、ついでに顔にも水を浴びせた。冷たい、けどさっぱりする。鏡の中にいた私は青白い顔をしていた。ハンカチで顔を拭いて、吹雪にいきなり悪いことしたなと思いつつ先ほどまでお茶をしていたテラスまで戻って行く。気持ち悪いのがなくならないのはあんまし気分良くないが、制服が汚れなくて良かった。白い制服だなんてどんな微かな汚れでも目立ってしまうから。


「悪かったわね、お茶の最中に」
「カイザーの子でも孕んだのかい?」
「うえっ、ちょ、ホットミルクが零れたじゃない!」


予期せぬことを言われたものだから思わず口からホットミルクが零れた。噴き出さなくてまだよかったわ。なんで私が丸藤の子供なんか孕まなきゃいけないのよ。身に覚えがない。


「じゃあ、僕の子かな」


頬杖をつきながら、ニコリと笑って吹雪は言う。二度もしょーもない冗談に引っかからないわよ。それこそあなたも身に覚えないでしょうよ。くだらない。彼を睨みつけつつマグカップのホットミルクをずずずっとすする。私の反応がなかったのがお気に召さなかったのか、彼はその笑顔を崩さずにじっと私を見つめてくる。なんか、不気味で気持ちが悪い。笑顔だからこそ、余計に。


「こんな話があるんだ」
「なによ」
「どこの国だったかわすれてしまったけど、ある少女がね、妊娠したんだ。それがおかしなことに、口から精液を摂取しての妊娠だったんだって、すごいよね。

…ああ、それから、僕の特製ブレンドホットミルクは、美味しいかい?」


パチン、そんな音がしそうなウインクをして、彼は私の手の中のマグカップを指差し、それから次に私の腹部あたりに指をさした。は?と思いながら口の中のミルクを飲み込み、マグカップの中身に視線を移す。そんな、まさか、ホットミルクに、入れたの。うええ、またもや吐き気が押し寄せるが、出てこない、出てきて欲しいのに!吹雪、あなた、なんて気持ち悪いことを!


「背骨が甘くとろけるような思いだったよ。君が一口、また一口飲み込んでいくたびに。ああ、そんなに美味しそうに、って」


頬を上気させ、目をうっとりと潤ませ、ぺろりと唇をひとなめする吹雪。口元を手で覆うも、えずきしか出てこなくて。ああ、気持ちが悪い。目眩がする気がした。吹雪の精液が喉を通り体内におさまっていることも、吹雪のこの狂気じみた行動にも、それから、絶頂感に満ちた吹雪の表情にも。

20160409
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