十代#強気な想い人 | ナノ
俺の好きな子は実にかっこいい。男の俺から見たってカッコいいと言えるほど、男らしい性格の持ち主だ。だけど見た目はそれに反して可愛らしい顔立ちをしていて、初対面の奴なら誰でも惚れるんじゃねえかってくらいだ。まあ俺もその中の一人なんだけれど。彼女はとても男らしいが、仕草がガサツとか喋り方が荒々しいとかそんなわけじゃない。行動の一つ一つが男らしいのだ。女の子が重い教材を先生に運ばされてたらさも当たり前かのように自分が代わりに持つと言ってその教材を運んでしまうし、先輩に絡まれていた女の子を庇って助けたり、昨日なんか電車で痴漢に出くわして痴漢の顎にエルボー食らわして駅員に受け渡してたっけ。見た目の可愛らしさと中身の男らしさで彼女は男女両方から支持を得ている人物だ。そんな子に惚れてる俺って無謀とか言うなよ?


「よう、昨日見たぜ。痴漢撃退してるとこ。相変わらずカッコいいなお前」
「そう?あんなの後手にまわってたら調子乗るだけじゃない。あれぐらいが丁度いいんだって」
「それでも女なんだからもうちょっと可愛らしくしてみたっていいと思うけどな」
「可愛らしくしたって私に何の得があるって言うのよ?」


くすくす笑いながら彼女と俺は車両に乗り込んだ。この車両で痴漢捕まえたのよ、と指差しながら彼女は言う。どうやら出やすいように扉付近にいたら後ろから覆いかぶさってくるようにしてきたらしい。苦しいし気持ち悪いしで無意識に肘が出て痴漢はノックアウト。うん、俺は見てた。すっげー痛そうだったなあれ。しかもその後気絶した痴漢をビンタで叩き起こして駅員に受け渡しだから痴漢もたまったもんじゃないだろう。可愛い子触ってたらいきなりエルボーだもんな。断じて彼女に触ったその痴漢が羨ましいとか思ってないからな。


「ここにいたらさ、こうしてきたわけよ」
「へっ、は?」


彼女は痴漢にあったという場所に自らが立ち、一体何をするのかと思ったら俺の腕を引いて昨日の再現をしたのだ。無論、痴漢の位置にいるのは俺だ。うわ、やべ、すっげ近い、と思っていたら駅に到着した電車の反対側の扉が開き、サラリーマンたちが押し寄せてくる。一瞬で満員になってしまった車内では、彼女と俺との距離がさっきよりも近くなった。俺は大量の人に彼女が押しつぶされてしまわないように庇うように、こちらを向いている彼女の顔の両側に手をついて体制を保っていた。おいおい、俺の顔、赤くなってないか。


「…苦しくないか?」
「うん、大丈夫。いっつも死ぬほど苦しいんだけどさ、十代がこうしてくれてるから平気」
「お、おう」


近すぎる彼女との距離に俺の心臓爆発寸前。なんか甘い匂いするし、髪をかけている所為で露出している耳とかなんかエロいし、おまけに上目遣いで見てるくるとかだめだろ、こりゃ。キスしてぇ。


「…俺でよかったら毎日こうしてやるけど。それに痴漢も触らせやしないし」
「一体どうしたの、どういう意味?」
「こういう意味」


我慢し切れなかった俺は彼女に口付けを落とす。手入れや保湿を重ねた彼女の唇はグロスなんか塗ってなくても、柔らかくて甘くてこれぞ女の子っていうもので。唇を離したあとの彼女の顔は、今まで見たこともないくらい可愛らしく頬を真っ赤にしていた。かという俺もきっと真っ赤だ。
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