十代#十代の本性 | ナノ
私は十代先輩が嫌いだ。嫌い、嫌い嫌い。何でかというとつい数日前、私の友達が彼に振られたという単純極まりない理由なんだけれど、私は友達が泣くほど傷付けられたことが許せなかったのだ。断るならばただ一言「ごめん」とか言うだけでいいというのに、彼は私の友達に向かって行き過ぎた暴言とともに断ったのだ。聞いたときはあんぐり口を開けて驚くしかできなかったが、それが十代先輩の本性だとわかったから余計に嫌いになった。ほんとうに嫌い。あんなに酷い人がこんなに近くに居るということだけで吐き気がする。


「酷い?何処がだよ」
「応えてくれなくて結構です。もうあなたとは話したくないので失礼します」
「俺が誰に対してどんな振りかたしたってお前には関係ないだろ?」


にやりと張り付いた十代先輩の顔を思い切りぶん殴りたく思った。
彼の頭の中には人への思いやりという言葉はまったくと言っていいほど入ってないらしい。ただ人を弄んで楽しんでるだけのこんな男、文句を言いに来ただけ無駄だったのだ。自分から彼に近づいて置きながらなんだが、早いところこの場から立ち去ってしまいたい。ほんとうに吐いてしまいそうなくらいの違和感が、胸の中を支配していた。十代先輩の見つめてくる視線にも耐えられなくなってきた私は、もうその場から駆け出そうとしていたところで、突如腕が引かれた。振り向くまでも無い。掴んだのは十代先輩だ。


「逃げんなって」
「っ、離して下さい」
「何であんな振りかたするか、教えてやろーか?」
「結構ですから、離して下さい」
「俺さ、好きなヤツにしか優しくしねーの」


何が言いたいのだ、そんな瞳で睨みつけてやると冷徹な彼の瞳に身体全部が凍ったみたいに硬直して、走り出そうとしていた足は不自然に立ち尽くす。脳味噌は危険信号を出し続けるが、身体は言うことを聞いてくれなくて、彼の視線に捕まったままだ。今から何をされるのだろう。頭には恐怖が徐々に侵食し始めていた。そんな身構えを取っている私を見て十代先輩は突然笑い出した。彼は笑っている。だけど私の身体の硬直は取れない。なに、なんなのこの人は。


「そう怖がんなって。言っただろ?俺は好きなヤツには優しくするって」


ほら、こうやってさ。怪しい笑みを浮かべた十代先輩の、私の腕を掴んでいないほうの手が、私の頬を優しく撫でる。ぞくり、今まで感じたことの無いくらいの悪寒が背筋を走って、脳天まで駆け抜ける。先輩の言葉を理解した私の頭は、やっぱり彼を嫌いだと叫んでいた。

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