万丈目#気が狂ってる | ナノ
ふふ、と思わず笑いが口から零れた。嬉しいからだ。何が嬉しいって、全てが嬉しいんだ俺は。嬉しくて、楽しくて仕方がない。もう一度口から笑いを零すと目の前の彼女は頬に涙を伝わせた。何故お前は悲しむ。こんな嬉しいことは無いと言うのに。ピタリ、右手で持っている包丁を彼女の首元で止めると、彼女は口を覆い隠している両手を震わせ恐怖していた。俺を見つめる宝石みたいな瞳は涙でキラキラと揺れていて、またこれが美しいのだ。


「怖いか?」


ボロボロと彼女は涙を流しながら無言で恐怖を訴えるが俺にとっては愉快なことでしかない。逃げる彼女を追い詰め、力を持って制し、恐怖のどん底に突き落としたところで交換条件を持ち出す。お前は恐怖を取り除いて欲しい、俺はお前のその手を口元から退けて欲しい。彼女はこれを受け入れればいいものの、次に何をされるか見越しているからか、中々受け入れてはくれない。ああ、苛々する。いや、でも俺の場合彼女を殺してからでも口元を覆い隠してる手は取り除くことができるのだから、こんな所で止まっている必要は無いのか。それを聞いた彼女は身体を震わせ、わかったから!と手のひらで覆われてる口で叫んだ。そしてゆっくりと口の拘束を解いていき、完全に彼女が口から手を離した瞬間、俺は包丁を投げ出した。


「や、万丈目!」
「やっと、」


俺は無我夢中で彼女の唇に口付けた。彼女の唇の間に舌を突っ込むと、彼女は俺の黒い制服を強く握るように反抗するがそんなの俺にとっては痒くも痛くも無い。彼女の唾液が絡まる自らの舌を堪能しながら、俺はやっと彼女を手に入れたのだと歓喜した。

流星群の叫ぶ夜
--------------
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -