遊星#席替えしてとなりになる | ナノ
学パロ

自分の手にある紙に書かれた数字と黒板に書かれた四角の中にある数字とを交互に見比べてなんども確認した。俺の番号は22、黒板の22の位置は窓際の一番後ろの場所で、そこがこれから新たな俺の席になった。そして少し離れてはしゃいでいる彼女の話し声から聞こえてきた彼女の番号は確かに俺のとなりであって、俺は本当に間違えていないかもう一度自分の番号と黒板を確認したがどうやら俺の席は窓際の一番後ろで隣は彼女らしいのは確かな現実だった。密かにガッツポーズをとってしまった、誰も見ていないだろうからいいが。明るくて話上手な彼女はクラス替えをして同じクラスになったときから気になっていた存在だった。無口でクールだとよく言われる俺とは全くの正反対である彼女が気になったのは自分が持っていないものを彼女が持っていたからだろう。きっと彼女と話したら楽しいんだろうと思うこのごろだったが、このクラスになって半年も過ぎたが用事があるときでさえ一言二言しか会話したことがない。と言うかそれが会話と呼べるかどうか悩みどころだが。席が隣になったことで今までよりはきっかけが増えるだろうし自然に会話が出来たらいいなとか淡い期待を込めて俺は机の荷物を新しい席へと移動させた。


「今日からよろしく」
「あ、よろしくっ…」


そう挨拶すれば彼女は慌てたように短く返事をして直ぐに俺から視線を外し前へと視線を戻してしまった。と言うか、それ以来なぜか彼女はこちら側を見ようとすらしない。確かに彼女の右側は俺しかいないから見る必要はとくにないだろうが、流石にこっち側に消しゴムが落ちて拾うときくらい必死に前を向いて拾わなくてもいいんじゃないか。ついでに俺が拾おうとするのをそんなに避けなくてもいいんじゃないか。やっぱり彼女みたいな明るくて太陽のような笑顔が似合う人たちがあまり笑わない俺のような人間と関わるのは難しいということか。しかしここまであからさまに避けられるとけっこう傷つくな、気になっていた人にされるのだから尚更。まあ俺の性格に難ありと言うことなのだろう、仕方ないか性格を変えるなど今さら当に無理な話なのである。はあ、と吐いた深い溜め息は何処かへ消えていった。
次の時間は数学だった。机の中から教科書とノートとを取り出して開けば隣の彼女は慌てたように鞄や机の中を探っていた。教科書かノートを忘れてしまったのだろうか、とすぐに予想が立てられた。始業チャイムが鳴っても彼女の机の上にはノートしか出ておらず俺の推測通りどうやら教科書を忘れてきたらしい。少しして先生が授業を始めたが当たり前に授業は教科書の内容をやっているわけで、黒板しか情報源がない彼女は四苦八苦したようにシャーペンを走らせていた。これはチャンスかもしれない。俺は意を決して小さく彼女の机をコンコンとつつき、こちらを向いた彼女に自分の教科書を指差した。一緒に見ないか、と言う俺の意図を察した彼女は申し訳なさそうに頭を軽く下げ、この数学の時間中机のはしっこに置かれた俺の教科書を覗きこんでいた。その間少しだけ近づいていた彼女との距離が嬉しかった。この授業が終わってしまえば離れてしまうのだろうけれど。


「あの、ありがとう遊星くん…!」
「あ、ああ、これくらいお礼を言われるほどじゃない」
「優しいんだね、遊星くん」


少し戸惑ったような声で彼女はそう言った。まさか彼女からそんな風に言われるとは思わなくてむしろ嫌われてるんじゃないかって思い始めてたし、驚いて席を立っている彼女のほうに視線を向ければ彼女は目があった瞬間顔を赤くしていそいそと教室を出ていってしまった。これは、


「自惚れて…いい、のか…?」


やばい、俺、顔真っ赤だ。
--------------
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -