十代#子供ができました | ナノ
ヘッドフォンをしていて良く聞き取ることはできなかったが、十代の口元と彼の困ったような顔で私に話しかけていることが理解できた。何をそんな顔しているんだろうと思って耳を覆っていたヘッドフォンをとると、機械的な音を長時間直接に聞いていてもので、突然入ってきた自然な音に耳を通して驚いた。音楽ウォークマンのスイッチを切って十代に向き直ると彼はやっぱり困ったような顔をしながらこっちを見てくる。私は十代を困らせる何かをしたのだろうか。疑問を抱きながら話しかけてみると、良くそんな長時間聴いていられるな、と私の大好きな蜂蜜柚子茶をティーカップに出しながら十代は言った。こぽこぽと蜂蜜柚子が注がれる音に少し酔いしれながらも私は雑誌を手に取り、彼の方へと向かう。早く飲みたいな、蜂蜜柚子。すごく美味しいんだよね。ティーカップと雑誌を交換するように十代に渡す。


「こんなん効かないかも知れねーぞ?」
「でも試してみる価値あるじゃない」
「俺はお前が好きなようにやってくれればいいと思ってんだけど」
「だから、好きにやってるんじゃない」


それにこの雑誌買ってきたのは十代じゃない、そういうと彼はバツが悪そうに眉を眉間に寄せるが、私にとってはその姿が少し面白かった。十代だってやっぱり興味あるんだってわかったんだから。


「そりゃ楽しみだろ。自分の子供なんだし」
「あははそりゃそうだよね」
「あー早く生まれてこねえかな」


十代ってば気が早すぎる。まだまだ先のことなんだし、と下から十代を覗き込むと、先ほどのふてくされた顔がどこかに行ってしまった代わりに、彼の表情は待ちきれないというおやつを前にした子供のように瞳がキラキラと揺れていた。こんな彼が父親になるなんて、やっぱり少しおかしな感じだ。腰に彼の手が回されて少し骨ばった手が私のおなかを優しく撫でる。いつもは厭らしい手つきとか下心丸見えな仕草でしかなかったけれど、今では私と赤ちゃんを気遣っているようで微笑ましい言うか何と言うか。くすぐったい感じ。


「ねえ十代はどんな子になって欲しい?」
「やっぱ俺そっくりな感じだな」
「え、それはちょっと手が焼けて困るかも」
「ひでっ」
「ということでクラッシックの続きを聴いて、いい子に育つようにしましょー」
「俺の意見聞いた意味ねぇじゃん」


程よい体重で圧し掛かってくる十代を横に、口に流し込んだ蜂蜜柚は十代のしてくれるキスみたいに甘く柔らかい味で、こんな家庭になれたらいいなと十代に微笑んだ。

愛を唄う
(そして十代はそんな家庭にするんだよ、と笑うのだ)
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