ヘルヨハン#不気味なヨハン | ナノ
あれだけ逃げたいって言ってたのに、逃げないんだな。愚問を問うた目の前のコイツに思わず私の足蹴りが飛んでいって、露出した彼の二の腕に盛大な音を立てて当たった。いつもはフリルの制服で隠れてた腕が、それを剥ぎ取った下はこんなにもがたいが良かったなんてついさっき知った気がする。見た目通り厚い筋肉の所為で、私の本気のキックはどうやらあまり効いていないらしい。オレンジ色と言っていいのか、そんな気持ち悪い色をした瞳で、彼は薄ら笑いを浮かべながら私の頬を撫でた。逃げない?この両手両足の鎖でどうやって逃げろって言うんだか。さっきのキックだって鎖を引き摺ってのもので、たったあれだけの行動でも息が切れるほど辛い。重い鎖を引き摺って逃げろっていうのは到底無理だってわかってるくせに。こいつの頬を撫でる手を退けたくて、顔を横に振って振り払ったらどうやら彼の気分を害してしまったらしい。いらつきを表した表情で私の両手に繋がれてる鎖を思いっきり自分のほうへと引いてきた。じゃらり、重たい冷たい音を響かせて、バランスを崩した私は彼の方へと倒れこんだ。抱き締めてきた彼の腕が、気持ちが悪いほど優しくて吐き気がした。


「壊れるほど愛してやるよ」
「それは無理ね。もうすでに私は壊れてるんだもの」
「おいおい、誰に壊されたんだよ」
「あなたに決まってるじゃない。こんな状況で何日も生かされて壊れない方がおかしいわ」
「まだ壊れてないさ、だってキミはまだこんなにも饒舌にじゃべってる」
「あなたは壊したいんじゃない。狂わしたいんでしょ?」


私を狂わして、自分に一生尽くすような奴隷が欲しいだけなんだろう。単純な願望だ。でもきっとそれはもうすぐ叶うことになるだろう。だっても私は到底頑張れそうにないし、ここまで自我を保ってきた方が逆に奇跡のようだ。鎖を付けられた時点で私の墜落は決まっていたようなものだし。すでに私は壊れてる。でも彼はまだ私を壊そうとしている。それでこそ私は欠片屑どころかスクラップにまでされてしまう気がした。
いや、スクラップのように壊れた私でも、愛してもらえるのはまだ幸せなのかもしれない。

歪んだ愛ほど美しいものは無い
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