十代#侵入者アリ | ナノ
指先に触れた体温は、温かかった。その体温の持ち主の髪の毛をゆっくりと撫でながら、俺はため息をついた。そして寝起きの頭をフル回転させながら、昨夜のことをゆっくりと思い出していく。昨日の夜、俺は確かベッドの上にデッキを広げながら、デッキ調整に励んでいたはずだ。途中で何回か電話がかかってきてて、そんなことに気がつかないくらい集中していたものだから、やっと俺が電話に気がついて取ったのは65コール目だと、電話してきた翔は言っていた気がする。そんでデッキ調整を終えた俺はそのあとどうした?冷蔵庫をなんかあさって、風呂に行ったんだっけか?曖昧な自分の記憶に、自分で呆れてくる。けれど、これだけははっきり言える。たしか俺は一人でベッドに入ったはずなんだよな。だけど起きたら隣にコイツが居るって一体どういうことなんだか。俺の目がどうかしたんじゃないかと疑って、まぶたを数回擦ってみたが目の前のコイツは消えたりはしなかった。俺の腕の中でのん気に寝息を立てている彼女の髪の毛を撫でながら、そういえば最近彼女にこのように触れる機会があまりなかったことをふと思い出した。彼女と会わなかったとか、喧嘩したとか、そんなわけじゃないけど、俺はなぜか彼女から引くように接していた。その理由は今の今まで理解出来てなかったけれど、この瞬間わかってしまった自分を恨んだ。彼女の体温と、小さく聞こえる吐息、男の自分とは違う柔らかい体つき。おいおいおい、これはかなりやばいんじゃないか。


自分の欲望から逃げるかのように、俺は今まで無意識に彼女から引いてしまっていたのか。


この状況のやばさにやっと気がついた俺は、硬直した手を彼女から引き離すことができなかった。ゴロリ、そんな俺をよそに彼女は先ほどよりも俺に近づくように寝返りをうつ。心臓爆発しそうだ。とりあえず彼女を起こしてこの状況を打破しなければ、軽く揺さぶるように彼女を起こそうとするが中々起きてはくれない。これじゃ必死に起こそうとしている俺が馬鹿みたいだ。頼むから起きてくれよ、焦りが混じった自分自身の声を情けなく思っていると、俺の腕の間から微かな笑い声が聞こえた。おい、お前、おきてるのかよ。


「お、起きてるなら早く言えよ」
「だって、必死な十代が面白かったから」
「てかなんでここに居るんだよ」


今すぐここから離れて、というか身体を離して欲しいが、それよりも何故ここに居るのかと俺は聞きたかった。たしかに俺は部屋の鍵はかけない派だが、何か取られるようなものはないし誰かが入ってくるとは夢にも思わないし。それに俺に用があるなら昼のうちでもいいはずなのに。そしたら彼女はすぐ隣に居る俺の瞳を見つめてこう言うのだ。


「だって十代があまり構ってくれなかったから、寂しかったんだもの」


少しだけ申し訳なさそうな目をしてそういう彼女に、離れてくれとは言えるはずも無かった。ましてや俺の我慢の限界だから、なんて理由も。二人で寝転がるベッドに温かい朝日が差し込んできた。


太陽が見ていた
(僕らの甘き思春期を)
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