ヘルカイザー#愛しい人をなくす | ナノ
彼女はよく俺に突っ掛かってきた。アカデミアの時だって、テスト勉強の仕方やデュエルでの勝つときのコツなど、他の誰にでも聞けるようなことをよく俺に尋ねてきていたし、彼女の視界に俺が入ったら彼女は毎回俺の名を呼んで手を振ってくれた。どれだけ遠くからだろうが、目が合ったら微笑み返してくれたりもした。いつの間にか、一人でいる俺を探すようなことを始め、自分で自分のことをあたしは亮の探知機だものと言い張っていたのも記憶に残っている。思い返してみれば、たしかにどこに行ってもどこに行くと告げていなかった彼女が現れてた気がする。卒業してからはそれもなくなるのか、なんて馬鹿みたいに寂しく思っていたあのときの俺はカイザーの欠片も無い。思い出すだけで笑えてくる。

なんでこんな話をするかっていると、結論で言うと俺は彼女が好きだったんだ。負け続けて希望を失ってヘルカイザーになった俺をあの鈴のような声で見つけて呼んでくれた彼女。もう戻れはしないけれど、彼女はまだあたしは亮の探知機だ、と笑って見せてくれた。冷たく凍っていたような心の感覚がその笑顔だけで温かく溶けたんだ。抱き締めた彼女の体温は俺とは全く違って、笑顔のように温かくて改めて彼女を愛しく思った。

あんなに温かかったのに、何故目の前の彼女は冷たい?温かく俺に笑いかけてくれた顔は、何故今なにも示していない?
真っ白な彼女の手のひらを握り締めた。

思い出話を終えた俺は立ち上がった。そして冷たく横たわる彼女に背を向ける。何処に行くって?そんなの決まっている。

「世界を壊してくるから、少しだけ待っていてくれ」


(彼女のいない世界など、俺には耐えられそうも無いみたいだ)
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