万丈目#進路に口を出す | ナノ
失礼しまーす、と威勢良く入った教室には、お目当ての先生はおらずその代わり俺様丸出しで有名の万丈目が居た。なんだ貴様もか、と言ってきた彼に対し、は?と一体何のことかわからなかったが、彼の手にある小さな紙はあたしの握っているそれと同じものだ。


「だいたいさー、夢なんてそう見つかるものじゃないのよね、ふつう」


握り締めていたのはここに担任に呼び出された理由でもある卒業後の進路調査書だった。第三希望まで書け、だなんてこれまでデュエルばっかして遊んで過ごしていたようなあたしに対して無理だと分かりきっているはずなのに、先生は残酷だ。一体なにを書けっていうんだ。プロになりたいという夢は昔持ってはいたが、自分のようなレベルのデュエリストなんか世界に星の数ほど居るって知ったからアカデミアで過ごしてる間にその夢はとうになくなってしまった。それで幸せ、と三つの枠内をまとめて埋め込んだら先生からのお叱りを受けて、書き直して来いとか言っておいて、教室に先生が居ないってどういうことなんだか。まあ書き直していないあたしもあたしだが。しかし万丈目もここに居るってことは調査書を押し返されたのだろう、一体なんて書いたのか、興味がわいてきた。


「万丈目は何書いてお呼びだし喰らったの?」
「ちがう。兄さんたちに勝手に出されていたから抗議しに行っただけだ」
「あれ?てことは先生居たんだ?」
「ここで待ってろと言われた」
「へぇー」
「貴様はどうせ変なことを書いたのだろう」
「変じゃないよ、れっきとした夢なんですー」


差し出した紙を受け取った万丈目は、それを見て綺麗な顔を顰めた。こんなの夢ではないだろう、とか言われそうな気がするなんて考えていたら本当に言われた。なんだか切ない。だってほかに思いつかないんだもん、仕方ないじゃん。突然彼は暇だな、と口を開き、よし!デュエルするぞなんていいだした。確かに暇なんだけれども、万丈目とデュエルなんて勝敗見えてると言いかけたら無理矢理手で口を塞がれた。そんなにあたしとデュエルをしたいのか。テーブルデュエルならいいよ、と了承し、お互いに互いのデッキをシャッフルし、机に置いた。万丈目の手って意外と綺麗なんだな、なんて考えているとおい?と声をかけられた。いけないいけない、手札を引いて、と。


「そうだな、負けたら調査書に俺の嫁になるとでも書け。というか、なれ。」
「はい?」


勝負が決まる寸前にそういうルールを付け足すのはずるいと思うんだけどな、とあたしは万丈目のダイレクトアタックを受けた。
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