万丈目#プロポーズされる | ナノ
高級マンションの最高級の最上階で私は用意されていたシャンパン片手に、大きすぎるくらいのテレビの前のソファに腰かけていた。そのソファもふかふかモファモファの高級ものであり、一般庶民の私が深く腰かけるのは腰が引けるので少し前のめりに座っている。自分でも思うけれど、そんな姿は実に間抜けである。それにしてもこんなマンションを一括購入、しかも追加の家具だってどれも高級なものだし、プロというものはこんなにも儲かるものなのか。確かに彼は万丈目グループの三男だったが親や兄たちから援助してもらうことは極端に嫌がっていたのだから、プロで稼いだお金で購入したのだろうな。こんなに稼いじゃう男が自分の彼氏だなんてちょっと信じられなくなってくる。綺麗な曲線を描いたグラスに口をつけシャンパンを喉に流し込むと、広がる味はいつもの安い味じゃない。これも高級品か、とテレビに視線を戻すと我が彼氏がデュエルしている真っ最中であった。


「相変わらずいい顔してるなあ」


デュエルディスク片手に敵を前にしている彼は実に楽しそうだ。学生時代と何ら変わらず彼のデュエルは見ている私をワクワクさせてくれる。スクリーンの向こうで楽しげに彼がデュエルしているのはいいことなのだが、その観客席で彼の女性ファンがきゃいきゃいと騒ぐのは全く頂けない。見ているとイライラしてくる。嫉妬だよ嫉妬。彼はカッコ良いし、最近ランキングもぐんぐん上げてきたし、何より魅せるデュエルをするもんだから周りが惹かれるのも無理はない。あーむかつく。あの魅せるデュエルは私だけに向けられていたものだったのに。はあ、とため息をついていると荒々しい実況アナウンスで私の身体が跳ねる。どうやら彼がダイレクトアタックで勝利を決めたらしい。その勝利に、ファンたちも喝采を上げる。するといきなりそのファンたちの大きすぎる喝采を準が、止めた。静かになった会場内で、準はテレビ中継のカメラに一歩一歩近づいていく。一体何を始めるつもりだろうか、と思っていたらアナウンサーからマイクを受け取り、カメラ目線で彼は話し出した。


「今日ここで伝えたいことがある」


テレビを通して彼は何を伝えるつもりなのだろうか。恋人である私にすらわからない。何が発表されるのかワクワクしていた私は前のめりになりながら、画面に釘付けになる。


「世界で一番愛する人に告ぐ。俺と、結婚してくれ」


思わず口にしていたシャンパンを噴出した。彼が今日の試合をここできちんと見て居ろと言っていた裏にはこんなことがあったのか。会場内のファンたちやアナウンサーは困惑していて、ファンの中には発狂するものでさえ居る。これじゃあ女性ファン減っちゃうよ。でもそんなことも考えずにプロポーズしてくれた彼が嬉しい。けほけほと未だ咳き込んでいると、画面の中の準は「噴出したシャンパンを片付けながら返事を考えておくんだな」と穏やかに微笑みながら黒いマントを棚引かせ、去っていった。なんで私がシャンパンを噴出したのがわかるんだ。

彼が帰って来たら愛してると言って、一番に抱きつこうか。


SCANDAL!

(翌日の新聞はサンダーのプロポーズで埋め尽くされた)
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