万丈目#万丈目に撫でられる | ナノ
何で私が万丈目なんかに勉強を教えてもらわにゃならんのだ!ちくしょー、こういう日に限って明日香の都合がつかないとか、神様のバカあほ。明日提出の数学プリントと万丈目を前にして、私は唸っていた。明日提出のプリントがこんなにも量があるとかありえないし、万丈目なんかに教えてもらうということも随分屈辱だ。あーあ、こんなんだったら勉強サボって赤点なんか取るんじゃなかった、と小さく呟いたら「お前赤点取るほど馬鹿だったのか」と万丈目は本気の驚き顔をこちらに向けてくるもんだから余計にムカつく!


「私は馬鹿なんですぅ」
「開き直らんでいいからさっさと解け!」
「そんな怒鳴らなくてもいいじゃない!」
「貴様にこんな理解力がないとは思わなかったぞ!」
「う、うるさいっ」


そこはさっきも説明しただろう!と優雅に足を組みながら、参考書片手に指を差してくる彼の眉間にはたくさんの皺が集まっていく。わあお、皺の密度がすごいよ。ついでに発してくるどす黒いオーラが目に見えるくらいで怖いっつーの。いらつきには糖分だよ、と多少私までイラついてきて、思いっきりイチゴ味のキャンディーをぶん投げてやる。それは見事に彼の眉間へとジャストミート。やべ、万丈目の後ろに般若が出現しそうな雰囲気だ。


「勉強する気があるのか!」
「あるわよ!ここ、わかんない!教えなさいよ!」
「一々叫ぶな、馬鹿者!」
「万丈目だって叫んでるじゃない!」


叫びながら彼に問題の解き方を問いかけると、これまた彼は叫びながら解き方を教えてくれる。当然ずっと叫んでいると疲れてくるもので。勉強会が始まってから30分とせず私たちの気力は尽き果てていた。一体何してんのだろ。ついでに数学プリントは二枚しか終わってないし。コレじゃ提出期限に絶対間に合わないじゃん、あははどうしよ。


「…えー、っと」
「そこはさっきの、」
「あ、そっかここでさっきの公式使うんだ。ってことは答えは23か」
「…やればできるじゃないか」


万丈目が褒めてくれてすごく驚いた。こいつ、人を褒めることがあるのか、とまじまじ彼を見つめていると、万丈目は次の問題を指差し「じゃあここはどうする?」と問いかけてきた。えーとこの問題は、ってこれもさっきの公式にぶち込めばいいんじゃね、と私はすらすらと答えを記していく。これでどうよ、と彼の顔色を伺えば、なんとも優しい笑顔を向けてくる。


「そうだ、いい子だ」


思わず私は初めて見た彼のそんな行動に固まってしまう。あれ、こいつは本当に私の知る万丈目だろうか。私に数学を教えるのがめんどくさくなった彼は、随分似ている人とでも入れ替わったんじゃないかと考えるくらい、私の脳味噌は混乱している。
だって、だってだって!


(そんな顔してそんな優しい手で頭撫でてくるなんて、反則だ!)
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