カイザー#カイザーに憧れる女の子 | ナノ
高校生活ってやっぱりうきうきしたものだと思う。学園一のイケメン君とかいて、それに憧れちゃう感じ。そういうの、すごく女子高生っぽい気がするけれど、何で自分自身がそうなると可愛く見えないんだか。不思議でしかない。となりで吹雪さまとか叫んでいる友達は可愛くて可愛くて仕方がないというのに。というかよく窓からそんな風に叫べるものだ。そりゃちょっとくらいお話してみたいとか思うけどさ、そこまでのことはあたしだったら恥ずかしすぎてできやしない。


「いやー、やっぱり吹雪様ってかっこいい」
「そうだね」


確かにみんなに愛想よく振りまいて、優しい吹雪先輩もかっこいいと思うけれど、あたしはどちらかというとよく彼の隣に居るカイザー先輩のほうが好きだ。吹雪先輩とは対照的に真面目な人だけれども、すごくカッコよくて見ているだけであたしは幸せになる。すごくモテモテでアカデミアで一番有名なそんな彼が、もしあたしに振り向いてくれたら、なんて話す勇気もないありえもしない妄想で、赤面している自分が恥ずかしい。せめて彼と話すくらいはしてみたいな、と押さえた頬は酷く熱を持っていた。


「どうしたの、そんなぶんぶん頭振って」
「な、なんでもない」


ふと窓の外の吹雪先輩から振り返ってきた友達は、火照りを覚まそうと必死に頭を振っていたあたしをバッチリ目撃していた。ああなんて恥ずかしい。突如、ぐううと情けない音が自分のおなかから聞こえてきた。そういえばもうお昼の時間だ。まだまだ吹雪さまと叫んでいる友達を放っておいて、自分の食料を手に入れようと購買へ行くことにした。ドローパンでも引いてくるとしよう。購買へ向かう途中、階段を下りていくと見覚えのある背中があたしの視界は捕らえて離さなかった。まっすぐした背筋、風に靡くダークブルーの髪、綺麗な横顔に宝石みたいな瞳。カイザー先輩だ、って嫌でもわかった。どうしようどうしよう。彼もドローパンを買いに来たんだ。憧れの彼に鉢合わせてしまったのは嬉しいけれど、これ以上近づくことが出来ない。ドローパンの購入目的で傍に行っておはなしするチャンスはあるけれど、どんなことを話そうかまるで浮かんでこない。やっぱり壁の陰に隠れて見ていることしか出来なかった。あたしも友達のようにファン丸出しで声をかけれたらいいのに、もし彼と同い年だったら今よりは近くにいけたかもしれない、そんな無いものねだりを頭の中で葛藤させていた所為だろうか、どうやら階段を踏み外したらしくあたしの身体は宙に浮いて落下中だ。その瞬間が怖いくらいにスローモーションで、あたし飛んでるんじゃない、と思うくらいだ。というか、ぜんぜん足付かないから本当に飛んでるんじゃね?と思って瞑っていた眼を開けたら、思わぬ現実が飛び込んできた。


「おい、大丈夫か」
「へ」
「平気か?怪我は?」
「か、……カイザー、せん…ぱい」


浮いていたのはカイザー先輩に抱きとめられていた所為だった。いつも見つめていたカイザー先輩は思っていたよりも力強い腕をしていて、あたしなんか軽々と持ち上げている。遠くから聞いていた彼の声は、今はしっかりとあたしに投げかけられている。いつも遠目でしか見られなかった彼の瞳は、こんなに美しいものだと、この瞬間知った。
そのあとあたしはカイザー先輩になんて受け答えしてその場を後にしたのか全く覚えてない。ましてやおなかがすいていたのも忘れたし、財布丸々落としたのも気が付いていなかった。


「し、死ぬかと思った」
「あれ、購買行ったんじゃなかったの?どうしたのよ」
「カイザー先輩と、…お話しちゃった」
「え!まじで、ほんとに?!なんて話したの?」
「そ、それが緊張しすぎて覚えてない」


呆けた顔で教室に帰って来たあたしを、友達は質問攻めしてきた。そんなに聞かれたって、本当に覚えてないんだってば!赤くなっているだろう両頬を押さえ込んで、カイザー先輩とお話できたなんて幸せすぎて死にそう、なんて思いっきり叫んだっていう、財布を届けにきてくれたカイザー先輩に気付く3秒前のできごと。
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