万丈目#惚れ込んでる万丈目 | ナノ
荒々しいノックに目を覚まし、少しイラつく頭の中でこんな夜中に尋ねてくる馬鹿は一体誰だと思いながら扉を開ければ、その馬鹿は我が愛しい恋人であった。彼女は扉を開けた瞬間に、素早い身のこなしで扉の隙間を滑り込み、俺の腕の中へとスッポリ蹲る。無言で飛びこまれてきたものだから、俺には全く状況が理解出来ない。ふと時計を見れば夜中の一時で、そんな時間にブルー女子寮からレッド寮まで駆けてきたらしい彼女は一体何があったのだろう。そんなに緊急事態があったのだろうか。


「おい、どうしたんだ」
「、っ、う」
「おい?」


俺の肩に顔を埋める彼女の身体は微かに震えていて、背中に回されている彼女の細い腕も異様に力んでいる。そんな彼女を安心させるためにゆっくりと抱き締め返し、落ち着くように優しく撫でてやるとその震えはだんだんと止まってきた。この状況でまるで小動物のような彼女が可愛らしいと思ってしまったのは少し不謹慎だろうか。まあでも可愛いのは仕方がない。落ち着いたらしい彼女は埋めていた顔を少しだけこちらに向けてきて、その瞳には涙が溜まっていた。少し胸がドキリと跳ねる。胸の奥から沸きあがってくるどうしようもない男の性に俺の身体に緊張が走る。まて、落ち着け俺。そんな俺をよそに彼女は擦りつくかのように身体をもっと寄せてくるではないか。待て待て待て待て。


「な、何があったんだ」


しまった、声が裏返った。
どうやら彼女の話を聞く限り、こわい話を天上院くんたちとして眠れなくなってしまったらしい。怖くて眠れなくなったというのに、よくここまでの道のりを一人で走って来れたものだ。といえばそりゃ万丈目に会いたかったから、とのお答えが。ああ、なんかもう駄目な気がしてきた。脳味噌がショート寸前状態の俺に彼女は少しそわそわしながら、一緒に寝て欲しいなと言ってくる。その言葉を引き金に、俺は彼女の腕を取り抱き締めたまま自分のベッドへと倒れこんだ。彼女が悲鳴を上げたがそんなの気にしない。


「頼むから、…これ以上可愛くなるな!」


どうにかなってしまいそうだから。なんて、…もう俺はどうかなってるんだろうがな。
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