ヨハン#殺し屋なヨハン | ナノ
グロ

ズガン、銃弾が私の頬を掠って後ろの壁に穴を開けた。銃弾が掠った頬はじくじくと痛みが走り、どろりと血液が顔の輪郭に沿って流れた。いたいなあ、そう呟けば目の前の下品な面した男どもが一歩引いた。銃弾をすぐ傍に打ち込まれたというのに少しも怯まない私がおかしいらしい。おかしいも何も目の前の男は私じゃなくて壁を狙って拳銃を向けていたんだから、避ける必要がなかった。それだけなのに何を驚くことがあるのだろう。その男をじいっと見やれば、そいつはどうやらその視線が気に入らなかったらしく倒れている私の腹に蹴りを叩き込んできた。激しい嘔吐感に襲われたが、口からは何も出てこない。それはそうだ。さっき全部吐き出したんだし。乾いた咳がコンクリートのこの部屋に木霊する。男は無言で私は踏みつけ続けた。


(いつになったら殺してくれるのかな)


男が蹴り始めてしばらくすると、右腕の感覚がなくなった。どうやら折れてしまったらしい。ああ、また治療費がかかるなあ。前回は二ヶ月でくっついたけど、今回はどれくらいかかるだろうか。複雑骨折じゃなきゃいいんだけど。私は蹴りつけるだけでなかなか殺してくれないこの男にイラついて、とうとう糸が切れた。私を踏みつけていた男の足に思いっきり蹴り飛ばし、まだ無事である左手を支えに立ち上がる。反抗する気力すら無いと思い込んでいたらしい男は、私が起き上がったことに恐怖したのか発狂しながら銃を乱射してくる。混乱している男が撃つ銃弾なんてすぐに見切れた。拳銃を捕らえている男の腕に踵落としをしてやれば、簡単に彼の腕はポッキーのように折れて拳銃を離さざるを得ない。すぐにその鉄の塊を拾い上げ、私は男に標的を合わせた。左手でも脳天に穴あけるには十分だ。次の瞬間、悲鳴と銃声が血液の匂いとともに舞い上がった。


「相変わらずグロイとこ狙うなあ。脳味噌噴出してるじゃん」
「どこ狙ったって一緒だよ」


五日間監禁されて抵抗せずに今更返り討ちだなんて、また殺してもらえなかったんだな、とけたけた笑いながらいつのまにか居たヨハンはタバコをくわえた。一応は私を助けに来たらしく、外の見張りの連中は彼によって全員殺されている。血液が散乱したこの部屋の中でタバコなんかつけるものだから、血なまぐさい匂いがより一層増した気がして、吐き気が胸の奥から込み上げてくる。あ、でも私の胃の中は空っぽなんだっけ。それにしても神様は卑怯だ。私がこんなにも死にたがっているというのに、死に一番近い仕事にも就いたというのに、私は死ぬことが出来ない。


「お前の死にたがりには困らされる」
「だったらヨハンが私を殺してよ。そしたら困ることはなくなるわ」
「ばか言え。愛しいヤツを殺すほど俺は愚かじゃない」
「じゃあ上からの命令だったとしてもあなたは私を殺さないのかしら」
「お前なあ、そんなことより今俺が告白したんだぜ?そっちに反応しろよ」
「死体が転がってるところで告白なんか嬉しくないわよ」


かちゃり、銃口を調子に乗るヨハンに向ければ、彼は両手を軽く掲げて降参のポーズを取った。だがその顔は厭らしい笑みを浮かべていて殺したくなった。


「このまま撃てばあなたは避けずに死んでくれるかしら」
「愛しいヤツに殺されるのも悪くないな」


私を殺してくれないこの世界よりも、おちゃらけるコイツの方がムカつく気がした。
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