ヨハン#親友の彼女に手を出す | ナノ
いつだって何かどこか不安を感じてて、仕方なかった。大丈夫だと笑顔で笑う恋人のキミの顔さえも信用できなくなってしまっていたのはいつからだっただろうか。その不安は私の弱さから来たのだろうか、それとも十代の笑顔に闇が滲んでいたのを感じ取ってしまったからだろうか。そんなものただの愚問でしかない。わかってるわかってる。本当はわかってて逃げていただけだと言うのに、私はそれを受け入れないで放置して信じないようにしていた。苦しみから逃れたかっただけ。けれどそれで苦しみから逃れられたかと聞かれたらそれはノーでしかない。いってしまえば私の行動はどうせ無駄でしかなかったのである。ああ、死にたさが増してきた。ほんとうは知ってる。十代のあの笑顔の裏側に何が隠されているのかを。


「元気ないな、どうしたんだよ」
「別に。ヨハンが心配するようなことじゃないよ」
「それでも気になっちゃうだろ」
「聞かないほうが幸せだよ」


あんな純粋な笑顔の裏にはどす黒い感情が埋めいてるのを知っているのはきっとアカデミア内でも私だけな気がする。きっと今ベッドの上で十代に酔いしれているあの子だって知らない。あの子が知ってしまったら一体二人の関係はどうなるんだろう。きっと天上院さんはあのきれいな顔を涙で汚してそれでも十代はきっと彼女を離してなんかあげないだろう。きっと泣きじゃくっている彼女を犯し続けるだけだ。ただの陵辱でしかない。一見それはひどい事かもしれないが、恋人なのに相手にされていない私から見ると羨ましいことなのかもしれない。何で十代は恋人のあたしを構わないんだろう。いや、その前に何で私はアカデミアの女子に手を出しまくるあんな男との恋人なんだろう。考えてみてたどり着いた答えに嫌悪感が増大した。


「十代は?」
「部屋で寝てるんじゃない?」
「そっか。んじゃ十代起こしに行こうぜ」
「そう、…ね」


私はあんな最低男でも惚れてしまっている、好きなんだ。だから彼から離れられないし、彼の浮気も天上院さんとの関係も見過ごしている。恋人として正しい選択かと言われれば間違っているに決まってるが、好きな人の傍に居るための選択としてはその方法の範囲内にはいっているはずだ、きっと。私は彼を咎めもしないし、やりたいようにやらしている。最初はあんなヤツじゃなかったのにな、とか考えてみたけれどそれはただ十代が裏の自分を隠していただけなのだから、結局彼の暴走を止めることは私なんかの役目じゃないのだ。せめてきちんと全てを覆い隠し続けてくれたのならば、私は何も知らないで幸せに浸ってられたのかな。


「…おい、どういうことだ…これ」
「見たまんま」
「お前、知ってたのか…?」
「結構前から」


レッド寮の十代の部屋の扉に手をかけたヨハンは絶句していた。私の彼氏に会いに来たのに、その彼は別の女とベッドでお楽しみ中なのだから当たり前か。彼の親友という身であるヨハンには衝撃的だろう。今日も天上院さん甲高い喘ぎ声出してるなあ。レッド寮の壁薄いんだからそのうちばれちゃうよ、と言ったらヨハンはいきなり私の手を取って走り出した。どこへ行くなんてわからなかったが走っている道から考えてどうやらヨハンの部屋に向かっているらしい。自分の部屋にたどり着いたヨハンは上着を脱ぎ去り、その辺に投げ捨てた。そして自慢のフリルつきの高級そうな生地で出来たワイシャツも脱ぎさって、私をベッドに押し倒す。彼からの言葉は何もない、けれど私は理解できる。なんで私はあんな人を好きになってしまったのだろう、こういう風に優しいヨハンみたいな人に惚れてしまえばきっと幸せだっただろうに。きっとヨハンだってわかってるんだ。ずっと前から十代のあんな所業を知っていた私が何故咎めないのかを。だから今こんなことをしている。今、ヨハンの優しさに埋もれたのならば、私は一瞬の幸せくらいは手に入れることが出来るのだろうか。答えを求めて私はヨハンの身体を摺り寄せる。

そして、



もう戻れないなんて、重々承知である。
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