ヨハン#エメラルドの羨望 | ナノ
ルビー達の存在、俺にとって彼らは当たり前の存在で、彼らの存在は誰に取っても当たり前の事であると、初めは信じて疑わなかった。生まれたときから彼らは俺の側にいた。何故彼らが俺のところに現れたのか、それは俺も彼らも、誰も知らないことである。しかしながら理由なんて俺たちにはどうでもよいことであった。彼らは俺にとって、遊び相手であり、家族であり、それから、相棒でもあった。辛いとき、嬉しいとき、悲しいとき、悔しいとき、どんな時でも彼らは側にいて俺を見守ってくれた。幼い頃は自分にしか見えない不思議な精霊だなんてわからなかったため、周りから怪訝な視線を向けられることが多かった。誰もいない空間に話しかける子、幼い俺はきっとそんな風に呼ばれていたんだと思う。何故そんな目で俺を見るのだろうと疑問に思っていた。俺にとっては確かに彼らはそこにいたのだから、見ることが出来ない周囲と衝突することも多々あった。何故彼らには見えないのだろう、確かにここに居るのに。幾度叫ぼうとも信じてくれる人は誰一人とおらず、大衆の鋭い視線が胸を貫くばかりだった。父母は其処までではなかったが、見えないものが見えてしまう息子に対して、少しばかり腫れ物を扱うような接し方をしていたと思う。しかしそれは致し方ないことかもしれない、何もない空間に声をかける息子を前にどうすることもできない思いで胸が溢れてしまっていただろうから。

幼いながらにそんな仕打ちに太刀打ちすることが出来たのは、確かに彼らがそこに居たからでもあった。幾ら否定されようとも、嘘つきだと蔑まされようとも、俺は大丈夫だった。だって、彼らが側に居たのだから。俺は、笑わねばならなかった。俺が苦しむと、悲しい顔をすると、彼らに心配を掛けてしまうから。必死に笑顔を作り、それから自分をとり繕い、彼らの存在を信じてくれない周囲に溶け込んで、友人という存在を作っていった。俺が友人の話をすると、彼らは笑って聞いてくれた。俺が友人達とデュエルをすると、彼らは喜んでくれた。俺はそれだけで幸せであった。

筈だった。


「ハネクリボーって言うんだ」


デュエルアカデミアで出会った遊城十代は、己の髪の毛と同じくらいもふもふした浮遊物体を率いてた。ハネクリボー、彼も精霊であった。俺はハネクリボーを前に思わず息を飲んだ。生まれて初めて、精霊を連れている人間に出会うことが出来たのだ。自分と同じ立場の人間に出会えて、胸が高鳴った。話したいことがたくさんある、きっと君なら俺の気持ちをわかってくれる、そう思ったんだ。

だけれども、君は俺とは違ったんだ。
君と精霊は周りの人たちに受け入れられ、それからそこに確かに存在するものとしてみんなが接していたのだ。だからこそすぐに俺の家族達とも同じように接してくれるようになって、嬉しかったのだ、けれど、も。

何故、と思ってしまったんだ。
彼も俺も同じじゃないか、なのに、俺は、あんな仕打ちを受けてきて、なのに、彼はあんなに笑っていて。いや、でも、彼も今までは俺と同じように迫害のような仕打ちを受けてきたかもしれない、いや、でも、それでも今受け入れてくれる仲間と出会っていて、俺の上辺だけの友人と違う仲間が側にいて。俺は、アカデミアに入っても彼の仲間のような人間には、出会えなくて、でも、彼らが側にいてくれたから全然、全然、平気で。平気な、筈なのに。


「ヨハン?」
「な、なんでもない、なんでもないんだ!」


それなのに、言葉に出来ないこの思いは一体なんなんだ。呼吸が出来なくなるほどの胸の痞えは、なんなんだ、わからない。わからない。わからない。

20161015
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