十代#失恋する十代 | ナノ
ざあざあと大風が吹く中、彼女は手すりに手をかけ泣いていた。涙を流す、という表現は実に似つかわしくなく、ぼろぼろと大泣きをしていた。大粒の涙が手すりに当たっては弾け重力に逆らえずコンクリートの地面へと落ちて行く。そんな彼女の数歩後ろから俺はキレイだなんてくそったれな考えを必死に掻き消していた最中だった。世界で一番愛しい彼女の不幸をキレイだなんて思う俺は、最低だ。


「もういいのかよ」
「も、無理だって、言われたっ…」
「そう、か」


必死に涙を抑えようとするがどうしようも出来なくなってしまっているのが声色で丸わかりだ。言葉の間に洩れる嗚咽に無性に胸が締め付けられる思いになった。本当は俺はここで喜ぶべきなんだ。大好きだった子が振られたんだ。俺にとってのチャンスなんだ。なのに、なんでこんなに苦しくなるんだ。その答えは本当はわかっている気がする。だけれどもそれを肯定したならば俺は何かに負ける気がして、彼女をこれ以上好きになってはいけないと拒絶される気がして、怖かったのかもしれない。ねえ、と俺にかけられた彼女のたった一言に驚くほど心臓が跳ね上がった。


「やっぱり私は子供…なんだよね、こんなことで泣いちゃうし、やっぱりあの人にとって私は…子供だったんだ」
「そんなこと、」
「きっと妹くらいにしか見られてなかった!私、こんなに好きだったのに!」


その言葉に、拳を握り締めて俺は駆け出した。そして彼女の全てを覆いつくしてしまうほど後ろから抱き付いて、包み込んだ。俺の心臓はどくどくと焦りだしていて爆発するんじゃないかって思った。でもそんな俺の心臓の振動よりも彼女のからだの震えのほうが大きくて、まるで雨に打たれて震え上がっている子猫のようだ。それに反し、彼女を助けるわけでもなくただ自欲だけで抱き締める俺はまるで捕食者だ。でも捕食者になったとしてもこうしていられるならいいかもしれない、なんて思ったりもした。俺、ほんと最低。


「あと二年…、二年だけ早く生まれてきたのなら、」


カイザーにちゃんと見てもらえたのかなあ…と呟かれた彼女の声は俺の腕の中で消えてなくなった。なんでカイザーを見るんだよ。なんで俺を視界にも入れやしないんだ。俺もお前と同じことを思うよ。苦しくて苦しくて仕方がないときはみんなして祈るんだ。絶対にありえないことを、どんなに望んでも仕方がないことを、祈ってしまうんだよ。

なあ、俺もカイザーのようにあと二年早く生まれてきたのなら、お前の瞳に映ったのかな。
--------------
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -