十代#心底惚れてるってことで | ナノ
唇がくっつき、それから離れていく。

まるで喉にドローパンが詰まってしまったかのようだった。呼吸が出来なくて、けれども思考する力は残っていて、刻一刻と酸素が行き渡らない苦しさが背後から迫ってくるかのような、そんな感覚だった。心臓が酸素のない血流を身体中に送り出す前に、私は息苦しさから解放された。ゆっくり、ゆっくりと息を吸い込めば、危機から脱して、安心したのか心臓の鼓動は徐々に緩やかになっていった。恋は胸を締め付けるだなんて言うものだけれども、いざ思い知ってみると締め付けるどころの話ではない。今まさに私は死にかけたのだ。苦しみの波に沈んでいくこの感覚は、きっと本当に死ぬまで忘れられなさそうだ。私は数度、瞬きをし、私を殺しかけた原因をじっと見やった。まさか彼は自分が今まさに人を殺しかけたなど思いもよらず、どうしたんだ?と私に微笑んだ。

いいえ、なんでも。

震えることなく凛とした声で答えた私に、彼は変な奴とまた笑った。彼の笑顔は太陽みたいであった。私を明るく暖かく照らしてくれる。

私は彼が好きだった。

彼も私を好きだった。

その太陽のような笑顔で、好きだ、付き合ってくれ、と告白の定型文で告げられたあの日、私は思わず固まった。彼が自分とおなじ想いを抱いていてくれたことに、感激したのだ。私を好いてくれたことよりも、おなじ感情を共有している、それこそが私は嬉しかったのだ。貴方に近づけた気がして。

けれども貴方にどんどん近付いて行くほど、私は自分の鼓動にいつか殺されるのではないかと思うようになった。貴方が私に触れる度、私の心臓は高鳴るのだ。貴方をそばに感じるほど、呼吸が出来なくなるのだ。私はきっと貴方に殺される。


「十代、貴方になら殺されてもいいわ」


私の言葉に彼は顔色一つ変えない。私の頬に指を伸ばし、妖しく笑みを一つ。


「殺されてもいいよりも抱かれてもいいって言ってくれよ」


彼の言葉に私は顔色一つ変えない。伸ばされた手に自分の手を重ね、吐息を一つ。

私にとってはそれは同義である、なんてきっと貴方は思いもしないのだろう。太陽に焼かれ落ちたイカロスのごとく、貴方に近付きすぎた私は落ちてゆくのだろう。それでもいい。それがいい。

20160801
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