ヨハン#すれ違う | ナノ
好きじゃないかと気がついたのはつい最近だった。そしてこの恋が叶わないと理解するのもほぼ同時だった。だって私はその人から恋愛相談をされているんだから。


つい二週間前くらいから隣のクラスのヨハンから恋愛相談を受け始めていた。ヨハンとはクラスメイトである十代を通しての知り合いであったし特に断る理由がなかったから私はすんなりとその依頼を受け入れたのがことの始まり。それに恋愛沙汰に首を突っ込みたがるのが女子の性であると思うし。その日から私たちは毎日お昼の時間会う約束になった。屋上でお弁当を食べながら彼の相談を受ける、それが私たちの間の約束だった。相談してくるヨハンは思春期の男子そのものって感じで、話を聞いているだけで私さえも胸がきゅんとしてくる。女の子の気持ち、とかこれからどうやって距離を詰めていこう、とかいろんなことを彼と話したけれど彼は教えてくれないことが唯一あった。それはヨハンの想い人のこと。どれだけ聞いても問い詰めても彼は頬を赤くして「言えない」とそっぽを向くだけ。だけど彼との会話の中で得た情報はある。彼の好きな人は彼とは違うクラスであって出会いは友達を通してだという。紹介されて、どうやら一目惚れしてしまったらしい。乙女だなあって女の私でも思ってしまった。


彼への思いに気がついたのはほんのちいさなきっかけだった。それはうちのクラスが体育の時間。先生が突然言い出したクラス全員で鬼ごっこをやることになり、鬼から逃げ回っているときだ。校庭の角に隠れていたところふと校舎側に目をやると窓から校庭をきょろきょろと見回す一人の顔が見えた。それはヨハンだった。ヨハンの席って窓際だったんだ、なんてのん気なことを考えているとあることに気がつく。きょろきょろと見回すヨハンの視線はどこか期待のこもった楽しそうなものだった。きっとヨハンは好きな人を必死に視界に入れようとしているんだ。多分彼の好きな人はうちのクラスに居る、と私の女の勘が告げたとき胸の鼓動が焦っていた。ドクドク、ドク、ドク、まるで嫌だって言ってるみたいで怖くなった。私、ヨハンが好きだったんだ。わからないくらい気づかないうちに好きになってたんだ。


その日のお昼、私はヨハンの約束を破ってしまった。


優しいヨハンは私を心配してわざわざクラスまできてくれた。約束にきてくれないからなにかあったんじゃないかって心配したんだ、って眉を下げて笑うヨハンはまだ自分のお弁当を持っていて私が来るのを待っていて自分も食べなかったと理解したとき本当に申し訳なく思った。


「明日は来れるか?」
「うん、大丈夫。ごめんねご飯食べてないんだよね、ほんとごめん」
「気にすんなって。授業中にこっそりたべるから」


早弁ならぬ遅弁だなと笑ったヨハンはキラキラしていた。好きだなあ、なんて思ったり。でもヨハンには好きな人が居る、私の恋は叶うことなどないのだ。こんなんならヨハンを好きな気持ちに気づかなければ良かったなあ。ヨハンから恋愛相談なんか受けなければ少しは希望を持って恋愛に真っ直ぐ望めただろうか。いや、ヨハンはわかりやすいから見ているうちにきっと気づいてしまうから意味ないか、と苦笑しながら自分のクラスに戻る彼の背中を見送った。

(さよなら恋心)



「よう、ヨハン。アイツとはどうなった?恋愛相談を盾に接近してんだろ?」
「十代!な、何で知って!?」
「1日来ないだけで焦るとかベタ惚れだな、お前」
「う、うるさい!」
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