少年の思い出 | ナノ
あなたは、誰だっけ
あの日何故私はひとり屋上で泣きじゃくっていたのだろうか。いくら思い返してもよくわからない。もしかしたら忘れてしまいたいと強く願って、自分の記憶から消してしまうくらいなにか嫌な出来事でもあったのだろうか。もしそうだとしたら精神的にかなり危ない状況ではなかろうか。どうかそうではありませんように、と半ば投げやりに神様に祈っておいた。
眠い授業をなんとか気合いで乗り切って大きなあくびをしていると、隣の席ではつい先ほどまで眠りについていた友人が目を覚まし大きく伸びをしていた。
「よく眠れた?」
「うんすっごく快眠。よくあの授業寝ないでいられるね。なんかコツでもあるの?」
「うーん、特には思いつかないなあ」
「眠そうに授業受けてる割に絶対寝ないよね」
その言葉を聞いて、胸の奥がざわついた。何故だろう、わからないけれど、言葉にできない何かがこみ上げてくる。
-----ずっと、見てた
頭の中でリフレインする声。聞き覚えのない声だった。なのに、何故だかとても懐かしくて、温かくて。
私は、何かとても大切なものを失くしてしまったのではないだろうか。零れ落ちる涙を止める術はなかった。
20180114 思い出せないend
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