少年の思い出 | ナノ
私のときめき


三限目の英語の時間、頬杖を付きながら先生の呪文のような朗読をぼんやりと聞き流していた。ふと教室を見渡せば数人が眠りに落ちている姿が見受けられた。だよね、私も今にもそのお仲間になりそうだよ。もしかしたら十代くんも寝ていたりするのかな、なんて思いながら3個右隣の彼の席をチラリと見やった。彼は教科書を立てて先生に壁を作って案の定眠りに落ちていた。こちらに顔を向けて寝ているものだから寝顔が丸見えで、可愛いなあなんて小さく笑った。笑顔も素敵だけれど、寝顔も素敵だ。半分口が開いていて、そのうちよだれでも垂れてきそうだと思ったら可笑しくて可笑しくて。どうか彼の居眠りが先生にばれません様に、と微笑みながら小さく祈った。

十代くんが先生に起こされることなく授業は終わり、ガヤガヤと騒がしくなるクラスメイトたちに起こされたのか、十代くんはぬあーなんて声を上げながら大きく伸びをしていた。その姿を見つめていたらふいに彼が此方を向いて目が合った。伸びをしているところを目撃されたのが気恥ずかしいのか困ったように笑いながら彼は人差し指で頬を掻く。その姿が可愛らしくて、微笑み返してしまった。それから次の授業の準備をしていると、十代くんが私の席へと近付いてきた。まさか彼がわざわざ私の席にくるなんて思いもよらず、胸が飛び跳ねる。彼は空いていた私の前の席に此方を向いて腰掛けた。


「見られちゃったな」
「見ちゃった。よく眠れた?」
「なんだよ寝てたのも見てたのか」
「よだれ垂らさないかハラハラしてた」
「うえっ、俺口開けてた?」
「うん」
「恥ずかしいな。なあ、寝ないコツってなに?」
「寝ないコツ?うーん、特に思い当たらないなあ」
「いっつも不思議に思ってたんだよ。眠そうに授業受けてるくせに、絶対寝ないよな」


まるで難問を解いている最中かのように彼は眉根に皺を寄せて私に疑問をぶつけてきた。先ほど口にした通り寝ないコツは特にない。というか、そんなことよりも、いっつも不思議に思っていた、という彼の言葉に引っかかりを覚えた。いっつも?


「もしかして、見てたの?」


まるで自意識過剰な言葉だと思った。冷静に頭でそんな風に思ってはいたけれど、正反対に私の心臓は高鳴っていて。じいと此方を見つめてくる彼の瞳から視線が離せない。十代くんは悪戯っ子の様に笑いながら言ったのだ。

「ずっと見てたよ」

20170312
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