帝の君 | ナノ
His preference is curl hair


今日はなんかお祭りでもあるのだろうか、アップルジュースパックをズルズルと啜りながらまさにそう思った。唖然としたように朝食の前に座る明日香に視線をやれば、彼女も呆れ諦めたように首を小さく振った。だよね、明日香もオベリスクブルー寮の食堂で起きているこの事態をよく飲み込めていないようだ。ため息を吐きつつ彼女の前の空席に腰掛ける。本日の朝ごはんはいつものアップルジュースにそれからコッペパンだ。シンプルなコッペパンが美味いのである。ビニールの袋を乱雑に破りそれからかぶりついた。


「なんかフェスティバルでもあるのこれ」
「残念ながら情報不足。今朝ここにきたらこうなってたの。よくわからないわ」
「でも、なんか、原因がなんとなくわかる気がする…」


ズルズル、もぐもぐ。そしてじろりと周りを見渡した。おんなじ髪型をした女子がそこら中をうろうろしている。私と明日香の記憶が正しければこの土日を挟んでこの現象が起こっている。謎のふわふわパーマの髪型増殖現象が。一度に女子がおんなじ髪型になるなんて、なにかきっかけがあるに決まっている。決定的な何かが。私の予想は、アイドルに憧れる女子が陥る行動にそっくりだと行き着いた。憧れのあの人のタイプがショートヘアだから自分もそう変身する、そういったような行動だ。そしてもうひとつ嫌な予感が同時に頭に浮かんでいた。このデュエルアカデミアで生活する生徒たちが自らの容貌に手を入れるくらい、憧れ恋い焦がれる共通の相手なんて、1人しか思いつかなかったのだから。


これまたすごい光景だ、授業を受けながら私は後ろの席から教室を見渡し感嘆した。ほぼ半数の女子が似たり寄ったりな髪型だ。滅多に見られる光景じゃないね、別に見たくないけれども。ふと黒い万丈目の方に目をやれば彼は相変わらずカイザー先輩が事を及んでいた席で授業を受けていて、そして突然の同級生女子たちの変化に気持ち悪いと言ったような顔をして居た。比べて十代はなんのこともないように何時ものようによだれを垂らしながら教科書に突っ伏して居た。十代の場合この変化に気がついていない気がする、彼はそういったやつだから。

ふと隣の三沢君が私の肘を突っついた。彼の方に首を向ければ、彼は困ったような顔をしながらPDAをこっちに向けてきた。そこに表示されて居た画面を見て、ああやっぱりね、そんな顔をしていたのだとおもう。


「彼の影響力は素晴らしいものだね」
「私は呆れたものだと思うけれども」
「君の髪がストレートのままで安心したよ」
「私はそんなのに振り回される女じゃなくってよ」
「…確かに」


三沢君は小さく笑いながら開いていたPDAを片付けた。カイザーのインタビュー記事の画面が消えていった。たったひとつのインタビュー記事でこんなにも周りに変化を与えてしまうなんて、彼の才能と魅力には脱帽だ。それに取り込まれてしまう人は愚かだと思うけれども。出鱈目言ってるとは思わないんだねえ彼女たちは。息を吐きながら瞳を閉じると浮かんできたのは、考えたくもないはずなのに、やっぱりカイザー先輩の顔だった。

ーーカイザー亮の好みに迫る!彼の好みはふんわりカールヘア!

20160621
--------------
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -