帝の君 | ナノ
she contemns me


「謝る?何か過ちを犯したのですか?」


彼女の瞳は冷たく俺を貫いていた。口に出した言葉以上に、彼女の目は語っている。俺の行動を過ちとするならば、なぜ他の女には同じことをしたのか、と問いかけられている気がした。

他の女だったら喜んで俺を受け入れていた、それが当たり前だった。
だが君は、俺を拒絶した。何度も、何度も。女を一纏めにして俺を拒むなどあり得ないと思い込んでいるような馬鹿な男を振る舞い、同じように彼女に触れようと試みた。その度に彼女は俺を拒み、蔑む視線で貫いた。その度に俺は罪悪感と高揚感で背筋を打ち震わせた。触れたいと思いながらも、他の女と同じように扱ってはいけないという思いに揺れて、どうしようもなかった。

彼女と出会ってから、俺の理性は脆くなったように感じた。以前はデュエルを観戦しただけではこんなにも鼓動は高鳴ることはなかった。彼女がトリッキーにカードを繰り出し、劣勢に顔を歪める十代。彼らのデュエルを見ていて、俺の高揚感は最大まで高まっていた。自らリング上に立たなくとも、ここまで楽しませてくれるデュエルを知って、身体が熱かった。そしてその後に己の戦略を振り返る彼女に近付いて、手を伸ばした。もちろん受け入れられるはずもなく阻まれた彼女の手に、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

女を調達しなければ、と思った。

でないと、彼女を無理矢理、どうにかしてしまいそうで。おかげで約束を取り付ける頻度が高まった。女を抱きながら、彼女の事ばかりを考えた。あの彼女の蔑む視線がいつでも俺を見つめている気がした。俺はとんだ性癖を持っていたようだ。今更だなんて言われてしまいそうだけれど。

彼女の首筋に噛みつこうとしたあの時、彼女が俺をどう思おうが構わないという考えが頭を支配した。それよりも彼女を抱いてしまいたい、その想いが許容量を超えて溢れて零れて、自分ではどうにもできなかった。この瞬間俺は、彼女を他の女と同等のカテゴリーに突っ込んでしまったのだ。俺が穴と言った女どもと、同じに。最低だと、思った。

「先日は、悪かった」

だから、謝って済む問題ではないとわかってはいる。でも謝らずにはいられない。許しが欲しいわけではない。俺を理解して欲しい。烏滸がましいと知っている。お願いだから、俺を見てくれ。

これ以上何も話すな、威圧的な微笑みで彼女は俺を黙らせる。彼女の瞳はやはり俺を蔑んでいた。

20160730
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