帝の君 | ナノ
he wants to get close to you


気色が悪い。女を相手にした後に俺に襲い来る感情はただそれ一つだけだった。女は単純な生き物だった。優しく頬をなで、好きだと一言囁いてやるだけで簡単にこちらに身を許す。愛されているかどうかだなんて彼女たちにとってはどうでも良かったのだ。それは俺にとってもそうであったのだから、その点は実に都合の良い部分であった。彼女たちはただ単に俺のようなステータスとそれなりの風貌を持った人間と関係を持つことに意味があったのだ。だからきっと俺と同等のスペックを持った奴が誘ってきたならば、彼女たちは喜んで足を広げ腰を振っているにちがいない。だからこそ、俺にとっては便利な相手たちなのである。

俺にとって彼女たちが必要だと気がついたのは、デュエルアカデミアに入学して生活に慣れ始めた頃だった。デュエルを終えた後の引かない熱に、どうしようもなく悶えることが多くなった俺は、好意を寄せてきた女を抱いた。終わった後に、ああこうやって発散させればいいのか、と思った。終了後はベタベタと気色悪いことをしてくるやつが多々いるが、どうしようもないデュエルの熱を冷ますのには丁度いいと思ってしまったのだ。

時折、自分の不道徳さ加減に反吐が出るほどの思いに襲われた。みんなが崇め奉られるカイザーという象徴の裏側が、こんなにも汚らわしいものでしかない。それが暴露するスリルと抑えられない衝動に揺れるも、しかしながらいつも傾くのは衝動の方であった。

その日はついにやってきた。

女との行為を目撃され、相手が恋人ではないと告げた時の彼女の顔は、なにいってるんだこいつと言いたそうにしていて、軽蔑の視線に俺は静かに受け入れることしかできなかった。この女は俺にとってどんな存在だろうと考えた時、浮かんだ答えは、ただの穴だった。不意に零れ落ちたその言葉に、彼女は、穴は喋りませんよと言った。予想だにしない答えに俺は笑った。こんなに笑ったのは久しぶりかもしれないと思った。彼女はとても面白く興味の引く存在で、初めて女に近付きたいと思った。

ただ同時に、彼女に近付いて己を知られて、汚らわしいと思われるのが、怖いと思った。

20160726
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