「と、言うわけで…よろしく頼んだっ!!!」
「いや、意味わかんねぇし!!逃げんなっ!!」

なんでだろう。
私はただのボランティア委員会なのに。

なんでだろう。
雲雀さん関係のパシリ係りになっている。

なんでだろう。
…いや、マジで。


ヤツも猛ダッシュで帰ってしまったため、この強引に渡された(押し付けられた)プリントを雲雀さんに渡しに行かなくてはならない。

手に持っているプリントを見つめ、深いため息を吐く。
放課後の教室をキョロキョロ見回すといつも一緒にかえる友達が別の友達と談笑していた。
これから雲雀さんのところに行くとなれば、確実に遅くなるのでその友達に「用事できたから先に帰ってて!」と、伝える。

「あぁ!さっき男子があんたに頼んでたもんね!頑張れ!風紀委員!」

背中をパシンと容赦ない力で叩かれながら「ボランティア委員ですっ!」と反論し、鞄とプリントを手にもって教室を出た。


以前、風紀委員の男子に「なんで雲雀さんの所、自分でいかないの?」と、聞いたことがある。男子は「意味もなく殴られる」と言っていた。その男子以外にも色々な人に聞いたが理由は似たり寄ったり。

殴られる、殴られそう、恐い。
寧ろそれしか理由はなかった。

私は昔から噂は信じない人間だったので、雲雀さんのもとを訪ねたことは結構あった。実際、一度も殴られたことはない。
だから、そのことを男子に話返したことがあった。
ソイツは安心して、「所詮は噂だもんな!」と、にこやかな笑顔で応接室に行った。


殴られて帰ってきた。


「女子更衣室でも覗いたの?」と、聞くと逆に怒られた。
「は、ハメたなっ!?」いやいや、そんなことして私に何の特があるのさ。

結論的に、雲雀さんは女の子は殴らないんだろうな、と思った。
…なんかその男子を実験台にしたみたいで悪いけど。
だって、タメ口で話したりしても、言い返しても殴られないし。

とかなんとか考えてるうちに、応接室兼風紀委員会の部屋にたどり着いた。

コンコン、と二回ノックすると気だるそうな声で「…誰?」と、言う声が聞こえた。

「如月。プリント出しにきた。」 

そう簡潔に伝えると「入って」と言われた。

扉を開けて中に入ると、机ではなく、ソファーに座っていた。否、寝ていたらしい。

雲雀さんのもとに歩み寄ると、「机の上に置いておいて。」 と、言われ「うん。」と、その通りにした。

プリントを机の上におき、そのまま帰ろうと「じゃあね」と、扉のほうに歩いて向かうと「待ちなよ」と、後ろから声がした。