「ごちそうさまでした」
友人と帰宅してから約三時間後。
今日も一人ぼっちの夕食を終えた私は自室に戻りベッドに横になった。
机の上に置いておいた携帯が光っているのを見て、メールか電話がきたのだと予想。
しかしその予想は覆された。
「何ぞこれ…」
着信 6件
メール 3件
電話もメールも両方だ。
誰からだろう、非通知だったりして。
見てみると、着信もメールも同一犯からだった。
折原臨也折原臨也折原臨也。
着信履歴の一ページを折原臨也に侵略された。
何だこれ怖い。
メールの内容はなんだろう。
差出人だけ見て本文はまだ見てないんだよね。
すると折原君からきた一件目のメールはこうだった。
──────────
4/15 19:14
From 折原 臨也
Sub 寂しい?
──────────
そうだよね寂しいよね。
でも俺は全く寂しくないよ。
強いて言うなら寂しがってる君の顔を見てからかいたい気分だよ。
てかさ、何で電話出ないわけ?
何度電話したと思ってんの?
居留守とはいい度胸だね^^
──────────
「何こいつ…」
この先のメールが嫌な予感しかしなかった。
でも一応確認しておこう。
──────────
4/15 19:27
From 折原 臨也
Sub 明日
──────────
明日どうしようか。
こんなに無視されるとは思わなかった。
パン3つよろしく(゚∇^d)
──────────
「………………」
顔文字に若干イラッ。
よし、次も見てみよう。
──────────
4/15 19:36
From 折原 臨也
Sub 無題
──────────
君も頑固だね。
何が嫌でそんな無視するのさ。
俺の相手なんかしないようにしようとかそういう強い志を持つのはいいと思うよ。
それは個人の自由だからさ。
人にはそれぞれ考え方があるからね。
ああ、人って面白い。
──────────
「最後のメールは何が言いたい…」
その前に私にも言いたい事がある。
折原君勘違いしてるよ。
ご飯食べてたから電話にもメールにも気付かなかっただけだってば。
よし、これは本人に直接電話してみよう。
折原君の電話番号がディスプレイに表示された。
発信ボタンを押そうとするが、ちょっと緊張する。
余り男の子に電話したことないからなあ。
しかしやらなければならない時もあるわけで。
私は思いきって発信ボタンを押すと、電話のコールが鳴り響いた。
が、ワンコールで切れるその音。
折原君ずっと携帯持ってたんだ。
「やっと連絡してきたんだ」
「折原君、一つ言っていいかな」
「何?」
「別に無視してたわけじゃなくてさ、夜ご飯食べてたから気付かなかっただけなんだけど。私だって毎時毎時携帯手にしてるわけじゃないし」
「そう。それだけ?」
「誤解が解ければ…一応それでいい」
「じゃあ俺の質問に答えてよ」
「質問?」
「そ、質問。寂しい?」
「いえ全く」
「予想通りの回答だよ」
「じゃあ折原君あんなメール送って来ないでよ」
「それも予想通り。詰まらないなぁ」
「あっそ。別に折原君に楽しんでもらおうとかこれっぽっちも思ってないから。じゃあね」
回線を切るとツー、ツーとそんな音だけが耳に入ってきた。
本当に彼は何がしたいんだか。
あんなこと聞いてどうするつもりだよ。
ああ、そっか。
予想外の回答を待ってたのか。
じゃあ私が寂しいって言えばよかったのか。
誰がそんなこと言いますか。
私は彼に突っ込みながらベッドに顔を突っ伏せた。
♂♀
「あーあ、勿体ない」
今日は委員会や係りで友達は三人とも会議や何かあったらしく、食べる相手がいなかったから折原君のパンを買うのには好都合だったのに。
私も係りはやっているけど、集まる日にちは今日じゃなかった。
「いないんじゃ意味ないってば…」
そう、折原君は今日は欠席。
昨日の夜、電話ではあんなに元気だったから多分サボりだと思う。
パンを買うのには好都合とは言ったが、昨日パン3つとか訳の分からないことを言われたので今日はお弁当を作ってみた。
せっかく早起きしたのに。
結局その日は何事もなく授業も終わり、放課後どうせ一人だから何処かに寄ろうかなーと思い60階通りにあるファミレスに入った。
喫茶店でも良かったのだけれど、私には今お金がそんなにあるわけではないのである程度値段の安いファミレスにしたのだ。
「いらっしゃいませー」
店員が奥から歩いて来る。
「お一人様ですか?」
「はい」
勿論制服なので喫煙席か禁煙席か聞かれるわけもなく、私は案内された方の席に座る。
「ご注文お決まりでしたらどうぞ」
「ドリンクバーで」
「はい、畏まりました」
そして私は飲み物を取りに行くため席を後にする。
「あれ…」
偶々なのか。
黒髪に学ラン。
何か折原君に似てるなぁ。
此方からだと短ランなのか分からない。
バレない程度に、怪しまれない程度に角度を変えてその人を見ると…と思いきや彼が先に此方を見た。目が合った。
折原君だった。
折原君の目の前には中学生くらいの女の子。
そう言えば相談センターなんだっけ、折原君。
「名前」
少し離れた席から私を呼ぶ折原君。
無視したらまずいか…
そう思い彼の席へと向かう。
「臨也さんの彼女さんですか?」
「違う違う。同じクラスの子」
「初めまして。…折原君の彼女ではないですよ」
そう言うと女の子は、「じゃあ貴方も私みたいに相談を?」と聞いてきたものだから、うんうんと即座に否定した。
「で、名前が何で此処に?」
「暇だったから」
「じゃあ名前も一緒する?」
「お邪魔になるだけなので。私相談乗るのとか下手だし」
「だろうね。それで一つ気になるんだけどさ。弁当いつも一つなのに何で今日二つ持ってるの?」
「どっかの誰かさんがパン三つとか言うから作ってきたの。あー勿体な「後で食べるからちょうだい」
突然手を出されたので少し驚いた。
「くれないの?」
「あ、違うの…ちょっとびっくりしたから…。そうそう。食べるなら早めに食べてね。一応は保冷用の袋にお弁当入れてるからそんなに早く駄目にはならないだろうけど」
「うん、分かった」
「それとさ、ノートありがとう。門田さんだよね。門田さんにもありがとうって言っておいて欲しい」
「はいはい。分かったよ。弁当、明日返すから」
「うん。じゃあまた明日」
なんか此処にはいない方がいいかな、とそう思い私は頼んだドリンクバーをキャンセルしてそのまま帰宅することに。
女の子が折原君に何か言っていたような気がするが、そんなことは気にかけず、池袋駅に足を進ませた。
( 難しいことは分からない )