「名字ー?名字いないのかー?」

最近梅雨入りし、じめじめとした鬱陶しい空気が取り巻いていた。

ホームルーム、担任が出席確認した結果欠席者は三人。
その中に、名字名前もいた。

(これだから早く早退しろって言ったのに…)

俺は昨日のことを思い出す。
名前は何だか熱っぽかったらしく、友人の薦めで保健室へ行ったのだ。
彼女本人は「期末試験あるからあんまり休みたくない」などと言っていたが。

そしてその日の三時間目、少しは楽になったと保険医に言い彼女は授業を出たのだが、隣人の俺から見ると明らかに気だるそうだった。

「早退届出したら?もし君が倒れたら保健室へ運ぶのは多分俺と君のもう一人のお隣さんだよ?そんな面倒くさいことしたくないから」
「やっぱり…そうだよね…」
「ああでも、そんな状態で家まで無事に辿り着けるわけないか。保健室で寝たら?」
「うん、そうする…」

結局三時間目が終わったと同時に名前は再び友人と保健室へ行った。


四時間目が終わり昼休みが始まる。

昼ごはんを買いに行こうと思った俺はシズちゃんと出会してしまった。
もちろんその瞬間シズちゃんが物を投げる壊す引っこ抜くで生徒の悲鳴があがる。
それでも今回無傷で乱闘は終わったけど、俺の足は購買じゃなく保健室に向かっていて、気づいた時には名前が寝ているベッドのカーテンを捲っていた。

俺達以外、誰も居ない保健室。
フラグが立ちそうだが、別にそういうことをしに来たわけじゃない。
本当に無意識に、ここに来ていた。
自分でも何故だか分からない。
心配だから見に来たわけじゃない。
かと言って何時ものように馬鹿にしに来たわけでもない。
ただ、外で降る雨の音が凄く遠くに聞こえるくらい頭の中は真っ白だった。

昼休みも終盤に差し掛かった頃保険医が戻ってきて、「折原君、授業始まるよ。そろそろ教室戻ったら」なんて言われたから俺は営業スマイル全開で「はい」と言いその場を後にする。

ああ、俺そんなに長い間彼女のこと見てたんだ。
ま、そんなことどうだったっていい。



♂♀



私は今日、学校を休んだ。
一日ほとんど寝たきりで食べた物は朝のお粥だけ。
一人暮らしだと、やっぱりこういう時も自分で何かご飯とか作らなければならないのだが、体が思うように動かなくお昼ご飯は食べられなかった。
ふと携帯の時計に目をやるともう夕方の五時。
新着メールも三件あった。
友人から、返信不要でお大事にというメールが着ていたものだから、涙が出そうになる。

そんな時、ピンポーンと家の呼び鈴が鳴り響いた。
どうやって出よう。
宅急便ならこのまま居留守してもだいじょ「名前ー」

宅急便じゃなかった。
いっそのこと宅急便の方が良かったかもしれない。
これは無視出来ない。

私はフラつく足を頑張って玄関まで運んだ。

「折原…君…ごめん、玄関開けたいのは山々なんだけどさ、風邪移るよ…あと、私パジャマだから…」
「別になんだっていいから。開けてよ」
「でも……」
「いいから」

そう言われたので仕方なく解錠すると、カチャッという音が折原君に聞こえたのか、私が扉を開ける前に彼に開けられてしまった。

折原君の格好は何時もの短ラン姿で、学校からそのまま私の家に来たという事が伺える。

「ほら、ノート」
「あ、ありがとう…でも、これは?」

ノートと一緒に渡されたレジ袋を見て疑問に思う。

「パンだよ。どうせ夜作れないでしょ。だから買って来たわけ。俺が気の利くお隣さんで良かったね。言っとくけど名前の好きな味とか知らないから適当に選んだよ」
「あり、がとう…」
「俺の家来るんでしょ?だったら早く治しなよ。そのままじゃ妹達に会った時無事に帰って来れないよ」
「随分とデンジャラスな遊びをする子達なんだね…」
「ともかくさ、早く寝なよ。じゃあね」

そう言い残して折原君は帰って行った。
ちょっとだけ、コンビニでパンを選ぶ折原君を想像してみる。
あんなこと言っていたけれど、実は色々考えて買って来てくれてたりして。

いや、まさか折原君に限ってそんなことはないか。
それでも今は、折原君に感謝してまた目をゆっくり閉じた…


「学校つまんないから、早く治しなよ」

( 行くべき場所は決まっていた )



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