「それで四木さん。今回の件は他の幹部のことも調べておくのはいつ頃が無難でしょうか」
「その件についてなんですがね、いいんですよみょうじさん。実は、もう一人の情報屋が其処ら辺のことはすでに手を打っているので」
「あ、そうですか…」

先日、粟楠会の四木さんから依頼がきた。
正確に言うと赤林さんからなのだが、「詳しくはよくわからねぇなぁ」と、四木さんに直接会いに行った方がいいと赤林さんに言われ今ここにいる。

「で、その人は何のために手を加えたんですか?」
「何でも、相手側の幹部に手を出すのは───」



♂♀



「あぁ、情報屋?」
「そうだけどなに?君から電話かけてくるなんて珍しいね、なにか相談?君の相談なんて「今から東口に来て」
「は?どこの?」
「池袋に決まってんじゃん」
「何で君の最寄り駅まで態々俺が出向かなくちゃいけないのかねぇ」
「いいから来て。そっちから来て」

私はブチッと一方的に切った。これで来なかったら今度売る情報は高値をつけよう。

けれども自分で言っておいて何だが、相当無理矢理なお願いだったかな。
でも、相手がアノ情報屋なら仕方ないよね。
憎くて嫌味ででもほんっっっっっっっ(以下略)の少しだけ情報屋として優れているという点では憧れているだいっっっっ(以下略)嫌いなアノ折原臨也だ。

自分で呼んでおいて深夜にだって容赦無く自宅まで呼び出しその上迎えになんて一度も来たことがないアイツが相手なんだからこれくらい問題ない、絶対!


情報屋が池袋に到着するまでの少しの間暇になったので、カバンに入れておいたミュージックプレイヤーを取り出し音楽を聞き、私は周囲のざわつきを掻き消すことにした。



♂♀



「なまえ」
「…………」
「なまえ」
「…………」
「聞こえてないの?ねぇ?」

ぽんぽん、誰かに肩を叩かれた。

後ろを振り返ると案の定情報屋が立っていたのでイヤホンを外す。

「何のために俺は呼び出されたのかな?」
「アンタ、私の仕事だって分かってて取ったでしょ」
「えー?なんのことー?」

そのとぼけた顔がやたらむかつくよもう。
知ってて言うんだから質が悪い。

「四木さんが言ってた。問題の組合の幹部について探りを入れるのは私の仕事のはずだったって。そんなときに一人のお得意の情報屋が現れてその事を言ったら現れた情報屋が、女性にそんな危険な仕事は任せられない。だから私がやりましょうって言ったんだって。誰だと思う?」
「それが俺だって言いたいわけ?」
「四木さん言ってたよ。あなたと仲の良い折原さんですよ、って」
「何が仲が良いのかさっぱりだね」
「そこにも凄くつっこみたいけどそれ以上にアンタに仕事取られたのが嫌なの!何が女性には危ないだよ。ほんとにそう思ってる人は深夜に一人で新宿まで来いとか言わないし!」
「君そんなに生活費第一なの?」
「当たり前!あの仕事出来たら相当な報酬なのに!」
「ふーん…」

うわああああこういう顔がまた腹立たしいいい!!

悔しさのあまり握り拳がぶるぶると震えちゃってるよ。
あぁもう悔し泣きしそう。でも泣かない。コイツの前じゃ絶対に泣かないって決めてるんだ。

ギリギリと歯をくいしばっていると、情報屋は何かを閃いたかのような表情を見せてはポンと手を叩く。

「じゃあさ、俺と一緒に住めばいい。嫁にもらってあげるよ。生活には何も困らないしね」

何かと思えばそんなこと…!!

「だれがそんなことするかよおおおおおお!!」
「うっわぁ、怖い怖い」

そう言って情報屋は走り出した。というより逃げ出した。

まだ話は終わってないのに…!!

私は逃げる情報屋の後ろ姿を走って追い掛けることにした。

「へぇー、君意外と足速いんだー」
「だてに陸上部やってたわけじゃない!」
「それくらい知ってるよー」
「じゃあ意外とか言うな!」

更にスピードを上げると、「俺だってだてにシズちゃんと張り合ってるわけじゃないからね、君じゃ追い付かないよ」なんて言われた。
むかつくこんのチクショー!

「まだ話終わってないんだってばもう止まってえええええ!!」
「スカート捲れるよー」
「るっさい!!」

大丈夫だこのくらい!
ってかバッグコインロッカーに置いてくるべきだった。

ええい、こうなったら捕まえられるまで追い掛けてやる。
いい年してなにしてんだよって気がするけどもうこの際気にしない。
生活第一。

「あのさー、さっきの冗談に決まってんじゃん。俺はもっと良い子選ぶよ」
「そんなこと分かってる!私が言いたいのはそうじゃなくて…ああもう情報屋だいっきらいだあああ!!」

気付いたら、情報屋は立ち止まってくれていました。

「俺も君ダイキライ」



(喧嘩はほどほどに派手にやりなさい)



「じゃあ言いたいことを十文字以内で」
「十文字!?…えーと、私の仕事返せ!!」
「俺に君の仕事ちょうだい」





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