※このシリーズは臨也が変態です。閲覧注意してください。















こっち見ないでください!
満面の笑みで手を振らないでください!
私、あなたとは他人ですから!!

「……………」

嫌なものを見た。
というより嫌な人を見た。
そして今、その人物とかれこれ三分間くらい見つめ合っている気がする。
私の思考回路はとっくにショート、逃避回路もとっくに切断されている。

ここは池袋にある60階通り。の、ど真ん中。
多くの人々が行き交うこの歩行者天国で地獄を見た私。
もうダメかもしれない。
ごめんねお母さんお父さん。

「やぁ、奇遇だねぇ。いや、もしかしたら運命とやらかもしれないけど。まさかこんなところで君と会えるだなんてことは思ってもなかったし、ましてやあんなに長い間見つめ合えるなんて夢にも見なかったよ。どうだい?君は俺に会えて嬉しい?」
「人違いだと思います。なのでさようなら」
「ちょっと待ちなよ。いくら照れてるからってそんな照れ隠しはアリなの?」
「凄くポジティブシンキングな方なんですね。良いと思いますよ。それでは」
「なら、そんな良い人である俺の家に来てみない?なまえなら大歓迎だ!」

そう言いこの人は腕を大きく広げ私に思い切り抱きついてきた。
ちょっと待て!
ここは60階通りのど真ん中ですよ!!
でも何で悲鳴をあげられないんだろう。
助けを求めるというものは、何故かこういう時に限って出来なくなる。

「行きませんよ。これから家に帰るんです。っていうか道のど真ん中でこんなことして恥ずかしくないんですか?離れて下さい」
「いいや全然?君にだったらキスだってできるよ。舌入れて。それよりさ、俺この前言ったよね。今度会ったら無理矢理にでもお持ち帰りだって」

すると彼は私の手を引っ張って勝手に池袋駅へと一歩踏み出した。
そう言えばこの人の家って新宿なんだっけ…?
私の定期外なんですけど…

って何で行く気になってんの私。

「あの、手離して下さい」
「一生離さない」
「いやいや意味分かりませんし」

そう言って手をほどこうとすると、彼は私の手に指を絡めてきた。
恋人繋ぎとかほんとにもう…

「分かった分かりました行きますから!手を離して下さい」
「嫌だ」
「嫌いになりますよ?」
「嫌だ」

やだやだって駄々っ子かこの人…
つか、既にもう嫌いな人として頭の中にインプットされてるんで。

ある意味「嫌いになりますよ?」は私にとって愚問だったかもしれない。

「でも君が来てくれる気になってくれたから精一杯おもてなしするよ」
「はいはいそれはどーも」
「はは、じゃあさ、まずはベッドに直行しよう。勿論俺の部屋のね」
「何が精一杯のおもてなしなんですかあり得ませんそんなの」
「なら風呂でヤる?それが嫌ならソファーでも立ちながらでも「病院、行きます?それとも警察に行きます?」
「ホテルに行きたいかなぁ」

めちゃくちゃ輝いてる満面スマイルを私に向けて彼は私の手を繋ぎながら楽しそうに前を歩いた。

普通にしていれば凄くカッコいいと思うんですが、生憎性格が…

「はぁ…あの、私新宿は定期外なんですけど」
「俺が払うに決まってるじゃん。そんなの当然でしょ」
「いや、定期外だって言えばもしかしたら行かなくて済むかな…みたいな少しの希望があったので」
「そんなに俺といるのが嫌?」
「嫌ですね」
「君のそういうところ、好きだよ。全部愛してるけど」

私は全部だいっきらいです、そう言うと彼は口角を上げて軽く微笑んだ。
何考えてるのかさっぱり分からない。

「なんですか?」
「ん?」
「だから、私の顔に何か付いてますか」
「いやいや違うよ。君が快楽に溺れてる姿を想像してただけだから。なまえが俺のことしか考えられなくなったらどうなっちゃうのかな」
「ふざけないでください」



♂♀



結局彼に手を引かれ、新宿のとあるマンションまで連れてこられてしまった。

「ひ、広いですね…」

家は新宿にあるなんて言うものだから、高そうなマンションに住んでるんだろうなぁとある程度予想はしていたが、まさかここまでとは。
高層ビルが建ち並ぶ新宿に、やはり高層であるマンションにこの人は住んでいた。

前に、「俺と結婚しよう?将来有望だよ?」と言われたことがあるのだが、確かに有望かもしれない。結婚なんてもってのほかだけど。

「やっぱりこんなに広いと落ち着かないっていうか…」
「なら俺と遊ぼうよ」
「何してですか?」
「体使って気持ちいいことを、「あぁ〜、やっぱり落ち着きますねぇ、深呼吸すると」

お!ここからの眺め凄くいい!
と一面ガラス張りの窓から外を見渡した。

逃げたってことバレバレだろうなきっと。

「わ!ちょっとやめ…っ、」

油断した。
私が彼に背中を向けていたからあちらの表情なんて分からなかったし気にも止めなかった。
けれどまさかこんな展開になるとは。
後ろから抱き着かれているんだと気付いた時にはもう既に手遅れだった。

彼は私の首筋に舌を這わせ、左手は太股を下から上へと撫で上げ、右手で服の上から胸の先端を擦り上げる。

「はっ…あの、ほんとっ…、」
「手に力が入ってないよ?それじゃあどんなに抵抗したって無駄だから」

待て待てこのまま流されてしまうのか私。
それは本気で嫌だ。
そう思い私は足で彼の足を踏もうとした。それしか抵抗する術がない。
が、予想外にも彼は私の足に自身の足を絡めてきた。

「あはっ、感じてるんだ。その顔凄くいいね。ガラスに写ってるよ」
「…あなた、いい加減にしたら」

ん…?
今冷めた女の人の声がしたような…
いや絶対したよね。
私が気付いたのと同時に彼の動きが止まった。
やっぱり誰か部屋に入って来たみたい。

「波江か…。今お楽しみ中だったんだけど」
「あら失礼したわね。でも、人に仕事を任せっきりで自分は女子高生いじめて楽しんでるなんて最低な上司ね。早くここの資料纏めてちょうだい」
「あの…不倫ですか?」
「は?」
「だって奥さんいるのに私…別に付き合ったりしてるわけじゃないんであれなんですけど…」
「勘違いしないで。私にはこんなやつの他に大切な大切な弟がいるのよ」
「そうなん、ですか…」

まさかここで修羅場を迎えてしまうのではないかと危機を感じたが、それだけは何とか回避できたようだ。

「せっかくいいところだったのに…ったく。あのままイかせられると思っ「さぁこの資料を纏めましょう。私も手伝いますから」

そう話題を切り替えると彼は、「じゃあなまえは俺の膝に座ってやりなよ」と提案してきた。

「嫌です」
「じゃあさっきの続きする?」
「特等席に座らせていただきます」
「うん、いい子だ」

満足気に微笑んだ彼は大きな革製の黒い椅子に座って両膝をぽんぽんと叩く。
「座って」と無言で合図しているようだ。
はぁ、と溜め息を吐き泣く泣く彼の膝という色んな意味での特等席に座らせてもらうと、前にあるデスクには大量のプリントが積み上げられていた。

私この仕事ちゃんとできるのかな…

「手伝いますからとか言っちゃいましたけど仕事ってどんなことをすればいいんですか?」
「ここに印鑑押してくだけでいいよ」
「それだけですか?」
「うん。それだけ」

なんだ、意外と簡単じゃん。
少しだけやる気パラメーターの上がった私は早速作業に取り掛かり、次々にプリントの隅に印鑑を押していく。
彼も何もしてこなかったから「きっとさっきみたいなことにはならないよね」と少しだけ安堵したその時。

「なまえ、もうちょっと足開いてくれない?」
「OKすると思いましたか?つか何でそんなことしなくちゃならないんですか」
「カメラで撮影した時になかなか上手く撮れなくってねー」

嫌な予感がする。
悲しいことに、こういう嫌な予感だけは何故かよく当たるのだ。
もしかしたら…と恐る恐る足の方を見てみると、黒い携帯が視界に入った。
白いライトが点滅している。

「あなた情報屋さんなんですよね?」
「そうだけど。それがどうかした?」



(盗撮が犯罪って知ってますか?)



「これじゃあおもてなしも何もあったもんじゃありませんね」
「こんなんじゃ不満?それならもっと過激な「断ります」





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