何でよもう!
今日何の日だと思ってるの!?
今までは毎年祝ってくれたのに!

…と言いたい気分だけど仕方ない。
いつもファイは私に優しくしてくれるし、それに恋人として大好きだ。

ファイの手料理も凄くおいしい。
それこそ、私なんかが作った料理とは比べ物にならないくらいに。

それでいて器用で何でもできるし頭は良いし優しい人だし、誰よりも私を大切にしてくれる。

もうそんな彼が大好きで大好きで仕方がない。
だから、こうやって心地好さそうに眠っている彼を無理矢理起こすなんて、私には出来なかった。

ソファーの上で眠っている彼の前髪を少しだけ掻き分ける。
綺麗な顔してるなぁ…
見惚れていると、小さく開いた窓から暖かい風が吹いてきて、カーテンが静かに揺れた。

「今日、記念日だね」

彼と付き合い始めて三年が経つ。
始めの方は私は恥ずかしくてキスなんてとでもじゃないし、自分から手を繋ぐことさえできなかった。

けれどどんどん日にちが経つにつれそういうことにも慣れ始めてきた私がいる。

だからこそ、こんなことも少し勇気を出せば出来る…はず…。

目をゆっくり閉じ、彼の唇に自身の唇を重ねた。

「おっはよー」

唇を離した時、どこからか声が聞こえて私は焦る。

ん、空耳?

…いや、分かってるんだよ本当は。
ただ、恥ずかしくて意識してしまう私の頭から“そんな考え”を取っ払うために敢えてファイを見ないように辺りをキョロキョロと見渡した。

「なまえ、顔真っ赤だよー」

あははー、と笑う彼に更に頬が熱くなる。
意地悪だな、もう。
こういう時は、よく笑いながら彼にからかわれる。

「ねぇー、こっち向いてよー」

彼に跨がる体勢なのだが…もう恥ずかしすぎる。
こんな状態でファイの顔なんて見られない。

「うーん、何も返してくれないと、流石に寂しいなぁ」

上半身を起こし、彼は私の髪を優しく撫でた。

ファイの膝の上に座る形となったのだが、ショートしそうである。

あぁ、キスなんてしなきゃよかった。

「…いつから起きてたの……」
「いや、さっきだよー。なまえが俺に跨いだ時に気付いたんだー。ちょっとドキッとしちゃったよ」
「…………」
「あ、照れてる照れてるー。かーわいー」

そう言って、ファイは私の頬に手を添え、そちらに顔を向かされた。

目を反らそうと思っても反れないのは、彼の真っ直ぐな目が何時にもなくすごく真面目に見えたから。

何だろうと思い少しの間硬直状態になってしまったのだが、彼の突然の行動でまた再び脳内がパニックを起こした。

キスを落とされるだけかと思いきや、少しいつもより長めのキス…だった…

「大丈夫だよー、ちゃんと今日のこと覚えてるから」
「え?」
「なまえさ、さっき何でこんな大切な日にオレが起きないのかーって顔してたからー」
「…最初っから起きてたんじゃん」
「実はね、そうなんだー」

ギュッと、私はキツく抱き締められた。
私が抱き締め返すと、ファイの手に更に力が加わったのが分かり少し嬉しくなる。

「一生大好きだよ、愛してるから」
「私もに決まってんじゃん」
「あ、今の言葉。貴重だったねー」
「……そんなことない」
「そんなことあるよー。だってなまえ、あんまり好きだーとか愛しるーとか言わないからー」
「…大好き」
「オレも」



相対性許容範囲内



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甘い感じのファイ夢とか久し振りすぎます。
いつもあんな感じの長編書いてるのでね(笑)

あまりないことなので楽しかったです!
微ツンデレ気味ヒロインがいいとのことで頑張りました!
そしてファイが若干押し気味で記念日ネタがいいとのリクだったので燃えたぎりました!w


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