鳳仙花

※死ネタ?なのかな






「──絶対氷結(アイスドシェル)」


呟いて、オレは静かに両腕を交差させた。

やっと、オレにも守りたい仲間が出来た。
好きな人が出来た。愛する人が出来た。
大切な──家族が出来た。


「グレイよせ!その魔法は…っ!」


ナツが血相を変えて叫ぶ。
そう、この魔法──絶対氷結(アイスドシェル)は、を使うとその魔法を使った者の身を滅ぼす。
これは、己の身を自ら氷に変えて封印する魔法。
つまり、ほぼ“死”に等しい。
かつての師匠──ウルから学んだ、氷の造形魔導士だけの特別な魔法。


「馬鹿かお前!やめろ!」

「オレはもう、自分の大切な人が死んでいくのを見たくないんだよ!」


そう、みんな死んでしまった。
父さんも母さんも、そしてウルも。
みんな、オレのために──オレのせいで。


「死にてぇのか、お前!」

「死にたく、ない…っ」

「…っ、!」

「まだ、死にたくない…っけど」


ゆっくり振り向いたグレイの目には、うっすら涙が浮かんでいて。


「それ以上にナツが好きだから…」


力なく笑うと前へ向き直り、目の前の化物を思い切り睨み付け、魔力を練るのに集中する。
ピシッ、と音を立ててグレイの身体が氷に変形していく。


「やめろグレイ!お前がいなくなったら…っオレは…!」


慌てて止めに入ろうと、駆け寄るナツにグレイは振り向いて首を振る。


「来るんじゃねぇ!巻き込まれるぞ馬鹿!」

「グレイがいない日々を送るよりずっとマシだ」


そう言って、ナツは躊躇いもなくオレを後ろから抱き締めた。
と同時に、ピシッ、と後ろから妙な音がした。
振り向くと、ナツの身体がオレと同じく氷に変形していくのが見えた。
慌てて突き放そうと身を捩るも、ナツは放そうとしてくれず、寧ろ抱き締める力を強めた。


「これで一生一緒にいられるな」


幸せにそうに、本当に幸せにそうに笑った彼を、突き放すなんて出来なかった。
オレに触れたら、ナツも一緒に氷になる。
そんなこと、絶対したくなかったのに。

そんな顔されたら、突き放せないだろーが…バカナツ。

最後のキスを交わし、オレたちは永遠の氷となった。











鳳仙花 -ホウセンカ-

(私に触れないで)








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