カラシナ







「やぁ、グレイ。最近眠れないんだって?」


何やら大きな袋を持って、ロキがグレイに近付いてきた。
隣に座っていたオレは、嫌そうに身体を背ける。
コイツ、グレイ狙ってるからあんま好きじゃねぇんだよな。


「てゆーか、何で知ってんだよ」


グレイの代わりにオレが答える。
相変わらず不機嫌そうな態度をとるオレに、ロキは気にしていないのか、涼しい顔をしながら、ルーシィから聞いたんだと答えた。
なんかその余裕そうな態度が、すっげぇムカつく。


「だから、今流行りの低反発枕をプレゼントするよ」


これできっと眠れる、
とロキは袋から枕を取り出すと、グレイに押し付けた。
気ぃ遣って口説こうとしやがって。
でも、無駄だ。
グレイはもうすでにオレのだからな。ナンパ野郎。
受け取った枕の感触を、手で確かめながらグレイは顔をしかめた。


「いや、気持ちはありがたいんだけどいらないや」


お、気に入らなかったんだな。
へっ、ばーか。ざまーみろ、青眼鏡。
勝ち誇った笑みを浮かべると、ロキは真面目に落ち込んでいた。
不覚にも、ちょっと同情しちまうほど。


「ナツの腕がいい」


ロキに枕を返しながら言ったグレイの言葉に、オレは顔に熱が上がるのを感じた。
やべぇ、恥ずかしいけど、めちゃくちゃ嬉しいこと言ってくれた。


「そ、そっか。じゃあ、これは僕が使うことにするよ」


そう言って、悲しそうにとぼとぼ歩いて行くロキの後ろ姿を見つめていたグレイが、此方に視線を戻して言った。


「今日ナツの家、行っていいか?」

「腕枕だろ、お姫様?」

「誰がお姫様だ、誰が」


やっべ。
嬉しくて、にやけが押さえらんねぇ。




















カラシナ

(小さな幸せ)








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