石竹







オレは、ナツが嫌いだ。
ナツの何もかもが全部。
その瞳も、その桜色の髪も。


「グレイ最近元気ねーな。体調悪いのか?もしかして何かあった?」


ほら、そうやってさりげなく優しくしてくれるところも。
髪を撫でたナツの手が心地よくて、胸がきゅってなる。
同時に、胸のあたりをもやもやするこの感じが、オレは気持ち悪くて嫌い。
だから、オレにこんな気持ちにするナツが、オレはたまらなく嫌いなんだ。

それだけじゃない、


「どうしたの、ナツ」

「あ、ルーシィ。グレイのやつ最近何かおかしくてさー」


ナツが他の女としゃべっているところを見ると、たまらなくムカつく。
何でこんなふうに思ってしまうのか、自分ではわからない。
ただ、ナツのせいだから、オレはあいつが嫌いだ。
苦しい、胸のあたりがとてつもなく苦しい。
これもきっと、ナツのせい。
だから、嫌いだ。
オレをこんなふうにした、ナツが。


「どうしたよ?黙ってちゃわかんねーぞ」


じゃあこの気持ちどうにかしろ、なんて言ったところで、あいつがわかってくれるわけない。
この胸のもやもやを取ってくれ、この際もう誰でもいいから。


「グレイ…?」


嫌い。
なのに、離れて欲しくない。
ずっと、そばに居て欲しい。
矛盾する思い。
オレの名前を呼ぶ、ナツの声にまた胸がきゅっと締め付けられる。
苦しい──どれだけオレに苦しい思いさせれば、気がすむんだよ。

ナツなんか嫌いだ。
ナツのせいで、オレはおかしくなった。
ナツと出会って、
一緒に仕事に行って、
たくさん喧嘩して、
同じ道を歩いて、
同じものを見て、

そのせいで、オレは。




















石竹 -セキチク-

(あなたが嫌いです)








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