枸杞

※グレイ死んでます。






「見てナツ、すっごく綺麗」


ルーシィにそう言われて、顔をあげると見事なほどに綺麗にギルドに架かった虹。

あぁ、グレイにも見せたかったな。
グレイと一緒に見たかったな。

ぼんやりとそんな思考を巡らせて、ぶんぶんと首を振る。
───ダメだ。
何かを見る度に、いつも思ってしまう。
あいつは、もう此処にはいないのに。
オレの隣は、片手は、心は。
あいつが──グレイがいなくなってから、ずっと空いたまま。


「グレイもどっかで見てっかな」


そう呟くと同時に、流れる涙。
ルーシィは痛々しい顔をして、そうね!とわざと明るく返してくれた。
気ぃ遣わせてごめんな、ルーシィ。

でも、だめだ、


「グレイが居たら何て言ったかな。フツーに綺麗だなとか?」


とまんねぇ…っ。


「そういや、前に虹が出たときオレがお前の方が綺麗だっつったら、面白いくらい顔真っ赤にしてたな」


涙で、虹が見えない。


「軽く流すかと思ったらすっげぇ本気にしててさ、おもしろかっ、」

「ナツ!!」


ルーシィの声に、ふと我に返る。
顎を伝う涙を、マフラーが吸いとる。
あれ、何でルーシィまで泣いてんだ。


「ナツ、グレイのことはもう忘れて」


何言ってんだ、ルーシィ。
そんなの無理に決まってんだろ。


「このままじゃ貴方も辛いし、見ている此方も辛いの…!」


泣きじゃくるルーシィを見下ろしながら、ふと考える。
──オレがグレイを想うことで、仲間が辛い思いをしているのか。


「過去なんか振り返らないで、“いま”を見て。ナツ」


いまを、見る──…?
今も昔も、そんなに変わらない。
ただ、大きく変わったのは“いま”グレイがいないということ。
オレの隣が、片手が、心が空いたままだということ。
埋めなければ、いけないということ。
──そうか。


「さよなら、グレイ」


小さく呟いて、オレは新しい人生を歩み始めることを誓った。

だから、グレイ。どうか、




















枸杞 -クコ-

(お互いに忘れましょう)








[ 15/26 ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -