カランコエ

※ロキがちょっと酷いかもです。






「え…?」


───目を疑った。
グレイの家のドアを開けた瞬間、ロキがグレイを壁に押し付けて、彼の首を絞めていた。
目の前の信じられない光景に頭がついていけず、オレはしばらく立ち竦んでいた。


「か…っは、」


苦しそうな嗚咽に我にかえり、グレイに目をやると、フラりと視線が揺らいだのが見えた。
と、同時にロキが手を放し、グレイの身体が崩れ落ちる。
反射的に慌てて抱き止めようとしたが、それはロキによって遮られた。
腹を思いっきり蹴られ、壁の方に蹴り飛ばされた。
どさりと鈍い音を立てて、グレイの身体が倒れる。
痛む身体を必死に持ち上げ、立ち上がると、ぎろりとロキを睨み付けた。


「てめぇ…っ何すんだ、ロキ!」

「グレイが僕の言うことを聞かないからだ」


はぁ…?と顔をしかめる。
そんなオレを見てロキはふと笑うと、意識のないグレイの長い前髪を乱暴に鷲掴み、無理やり起き上がらせた。


「ぅ…」


グレイが小さく呻く。
目の前で恋人が乱暴に扱われて、尋常じゃない怒りを覚えたオレは、じっとしてられるはずもなく、ロキに向かって走り出し、つかさず腹に拳を入れる。
仲間を傷つけたくはなかったのだが、大事な人をこんな風にされては、話は別だ。
吹き飛んだロキの手が離れ、再び床に叩き付けられそうになったグレイの身体を、今度はしっかりと抱き止めた。


「グレイ!」

「ぅ……っけほ、げほ!」


意識が戻って、酸素を求めて咳き込み出したグレイの背中を、擦ってやる。
うっすらと目に涙を溜め、ぎゅっとオレにしがみつくように抱きついてきたグレイの腕は、微かに震えていた。
背中に手をまわして抱き締め返すと、彼をこんな状態にした、さっさオレが殴り飛ばした張本人を鋭く睨み付ける。


「ロキ、何のつもりだ!」

「グレイが悪いんだよ?」


言いながら、ゆっくりと立ち上がると、ロキは窓に股がる。


「さっさと僕のモノになればいいのに」

「な…」


ロキはそう言い捨てると、オレが唖然としている間に、窓から外に出て行ってしまった。
──知らなかった。
まさかあいつが──ロキが、グレイを狙っていたなんて。


「ごめん、グレイ。オレ…」

「大丈夫…ナツ、すぐ来てくれたから」


へらっと力なく笑うも、未だ震えているグレイの身体を、再度抱き締め直す。


「ナツ…?」

「これからは、ちゃんと守る。お前が恐い思いする前に来る!ずっとそばにいる!」

「うん…」

「涙はこれで最後だ」


そう言って、優しく微笑んでやると、グレイは安心したように笑って、頷いた。
──よかった、震えが止まったみたいだ。


「あ、嬉し涙は別だぞ」

「わかってんよ」


目の前の唇にキスを落とし、オレは心に誓った。
───必ず、守ると。





















カランコエ

(あなたを守る)









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