フクシア







「さびぃ…!」

「そうか?」


あまりの寒さに、ぶるりと身震いをする。
そんなオレを見て、不思議そうに首を傾げるグレイは、当たり前のように上半身裸で、平然としてアイスを食べている。
ちなみに、今は真冬だ。
こいつは一体何者なんだ。
いくら氷の造形魔導士だとはいえ、真冬に裸でアイス食うなんて、ただのバカだ。
しかも今日は、こんなに寒いのに。


「何だ、その変なものを見るような目は」


ムッとしてこちらを睨み付けながら、グレイは丁度食べ終わったアイスの棒を捨てると、オレの手をぎゅっと握った。


「わ、冷てぇな」

「たりめーだ。お前が異常なだけだ」


冷えきったオレの手にとっては、平温のグレイの手が温かくて仕方がなかった。
オレがおとなしく握られていると、ふいにグレイがぽつりと呟くように言った。


「なぁ、ナツ。知ってるか?」

「あ?何が」

「手が冷たい人って心が暖かいんだと」


当たりだな、
なんて無邪気に笑うと、グレイはナツの手をそっと包み込む。そんなグレイを見て、オレはふと思った。


「いや、それは嘘だ」


何で、と言うようにグレイはオレの言葉に、不思議そうに小首を傾げた。
だってよ、


「グレイは手も心も、こんなに暖けぇじゃねーか」

「…ナツ」

「つーか、だいたいオレはそーゆーのあんま信じねぇタイプだし?」


言いながら、グレイを抱き寄せて額に唇を寄せる。
くすぐったそうに目を細めるグレイが、愛しくて思わず腕の中に閉じ込めた。


「…ありがと」

「どーいたしまして」




















フクシア

(暖かい心)








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