枝垂桃








「グレイ様、今日も素敵です!」

「おー、それよりナツは?」

「今日のグレイ様のお洋服、とてもお似合いですね!」

「うん。で、ナツは…」

「髪型もいつもながらバッチリ決まっております!」

「わかったから、ナツ…」

「ああ、今日もグレイ様が眩しすぎて、ジュビア直視できない…!」

「だからナツぅぅ…」


いつもグレイ様の隣にいるはずナツさんが、今日は珍しくいない。
それをいいことに、ジュビアは愛しのグレイをおだてあげ、思う存分の愛を伝えた。
グレイ様が何か言ってるけど、そんなのまるで聞こえていない(無視じゃないですよ)。
ジュビアは、止まることなく言葉を綴り続ける。
ふと、急に静かになったグレイ様。
ジュビアは不思議に思って、俯いたグレイ様の顔を覗き込んで言った。


「如何なされました、グレイ様?」

「…ジュビアなんかきらいだ」

「(ガーン!!)」


ふいっとそっぽを向いて通り過ぎて行くグレイ様を見ながら、わなわなと震える。
ジュ、ジュビア、ショック…!


「そんな、グレイ様ぁ…っ!」


グレイ様に嫌われたら、ジュビア生きていけない…。
ジュビアが落ち込んでいると、ドアの方から聞き慣れた甲高い声。
反射的にその声のした方に振り返ると、桜色の髪。
グレイ様の恋人──ジュビアの恋敵のナツさんがいた。


「おはようございます、ナツさん」

「おージュビア!今日は早ぇな」


言いながら、そそくさとジュビアの隣を通り過ぎ、目的のグレイ様のもとへ向かうナツさん。
そのまま忍び足でグレイ様の後ろに歩み寄ると、勢いよく後ろからガバッと抱き締めた。
と同時にグレイ様が、ひゃっ、なんて可愛らしい声をあげたものだから、ジュビア、キュン死しそうになりました。


「わり!遅くなった」

「ナツ…!」


振り返って、にっこり笑ったナツさんの顔を見たときのグレイ様の表情を見た瞬間、ジュビアはとても驚きました。
まるで花が咲いたように、ぱあっと顔を明るくし、頬をほんのり染めながらはにかむ彼。
本当に綺麗に笑うものだから、思わず見入ってしまいました。
グレイ様のあんな表情…ジュビア、初めて見た。
ジュビアではダメ。ナツさんじゃないと。
頬を染めたグレイ様の笑顔が、そう語っていた。
でも───、


「グレイ様が幸せなら、ジュビアも幸せです」


グレイ様の隣にジュビアがいられないのは、確かにちょっと残念。
でも、どんな形であろうと、グレイ様が誰を好きでいようと、ジュビアの気持ちは変わりません。

片思いだって、楽しいです。
貴方の笑顔が見られるだけで、ジュビアとっても嬉しいです。

──ずっと、好きでいさせて下さい。





















枝垂桃 -シダレモモ-

(私はあなたのとりこです)









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