いつもの喧嘩







「この氷ひえひえ野郎!」

「んだと、炎無駄使い野郎!」


目があえば、いつものように喧嘩を始めるナツとグレイ。
二人を見て、思わずため息を漏らした。
そんな私を見て、隣にいたミラジェーンがくすくすと笑みを溢した。
きょとんとして彼女の方に目をやると、今度はにっこり笑ってこう言った。


「お互い素直になれないだけよ。本当はナツだってグレイのこと大好きなんだから」


相変わらず、にこにこしながら言うミラジェーンの言葉が、当の本人達にも聞こえていたらしく、二人とも顔を真っ赤にした。


「んなわけねーだろ!」

「ありえねーっつの!」


言いながら、今度は物の投げ合いをし出した二人。
あーぁ、エルザが見たらただじゃおかないよ、この状況。
それにしても、ミラさんも意味深なこと言うなぁ。
この二人が、そんなに仲良いわけないじゃない。
そんなこと、見てりゃわかるのに。
首を傾げながら、二人のやり取りをじっと見ていた。
刹那、


「…痛、っ!」


ナツが投げたコップのガラスが割れ、グレイの頬を切った。
その衝撃で尻餅をつくグレイ。
血が細く頬を伝った。


「グレイ…!?」


ナツは血相を変えてグレイの元に走って行き、しゃがみ込んで頬を撫でた。


「わ、悪ィ!」


言いながらナツはグレイの頬に伝う血をぺろりと舐めた。


「ん…っ」


嫌がりもせず、くすぐったそうに身を捩るグレイに私は絶句した。


「ちょ…っ何なに!?あんた達どういう関係よ!?」

「ホモだぁっ!」


二人を見て目を見開く私とハッピーに、ミラさんは驚いたような表情を見せた。


「ルーシィ、知らなかったの?」


わけがわからず、何が?と聞き返した。
すると、彼女は楽しそうに笑うと、肩をすくめてこう言った。


「二人は付き合ってるのよ」

「はぁっ!?」


あんぐりと口を開けて二人の方をみると、これ以上ないくらい顔を真っ赤にしたグレイが、ナツに抱き締められながらわなわなと震えていた。
そんな彼を、心配そうに見つめるナツ。


「グレイ?どうし…」

「アイスメイク突撃槍ぅぅう!」

バキバキバキッ

「ぅおわぁあぁっ!?」


激しい音をたてて柱が折れた。それに対し、無数に現れた氷の槍を、間一髪で何とか避けることができたナツ。


「クソ炎が!人前で何やらかしてんだ死ねぇえ!」

「えええええ!ちょ、待て待て!オレはただお前の…!」

「アイスメイク大槌兵ぁぁあ!」

「ええええええええ!」

ドカーンッ!!






 * * *

 * * *






「どういうことだ、これは」

正座をしている二人の前に、仁王立ちになっているエルザ。


「これはグレイが…」

「いや、だってナツが…」

「要はどちらもだな」


――その後、泣いているグレイを慰めるナツの姿があったとかなかったとか。




















いつもの喧嘩

(だってお互い大好きだから)









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