すきだから







ぱち、ぱち

「……」


毎度毎度、こいつを見ていて思う。


「飽きないのか?」

「何がです?」


それだよ、
と言って、そいつ───ニアの目の前に置かれている作りかけのパズルを顎で指すと、奴はいいえとだけ答えた。

飽きないのか、と言うのはいつも同じ内容のパズルだからだ。
アルファベットの“L”の文字だけが描かれている、シンプルなデザインのもの。
しかも、やり過ぎてそれぞれのピースの場所を覚えているのか、奴は左端から順番にピースをはめていっている。
パズルが出来上がったかと思えば直ぐ様それをひっくり返し、ピースを全部外す。
そうしてまた一からやり直すのだ。

見ていて頭が痛くなる。
僕が思わず声をかけたのは、ニアがパズルをひっくり返した三回目のこと。


「変な奴」


ぱち、ぱち


「……」


再び沈黙になり、がしがしと後頭部をかいた。
刹那、


「メロ」

「…何だよ」


名前を呼ばれたかと思えば、パズルをといていたニアの手がぴたりと止まった。


「そんなに見つめないで下さい」

「は、はぁあっ!?何自惚れんてんだ馬鹿!」

「ずっと見ていたではありませんか」

「お前じゃねぇ!パズルの方だ」

「へぇ」


口角を上げながら、自分の髪の毛をくるくると指に巻き付けながら遊ぶニア。
こいつムカつく…!


「メロも、つくづく私に惚れていますね」

「ああ!?誰がお前なんか…!」


そこまで言って、思わず言葉が詰まる。
そりゃあ、悔しいけど僕はニアが好きだから。


「お前はつくづく腹立つ奴だな」

「それはどうも」


褒めてねぇよ、ちくしょう。
ああもう!こうなりゃ、やけくそだ。


「ああそうとも。僕はニアが好きだよ!誰よりもね」


少し荒々しくそう言って、ニアの顔に目をやれば、ぽかんと口を開ける間抜けな顔。


「……っ」


すると目の前のそれは、だんだん赤く染まっていき、ついには俯いてしまった。
え…、僕には散々さっきみたいなこと言っておいて、今さら照れるのか。
───っ可愛すぎだろ…。


「ニア?」

「…!」


顔を覗き込もうとすれば、バッとパズルの土台で顔を隠された。
思わず、顔に笑みが溢れる。


「おい、顔見せろよニア」

「嫌です…見たらノートに名前を書きますよ」

「な…!?、おま…っ」

「嘘です」

「何だよ!つーかお前が言うと冗談に聞こえないんだよ」

「それは失礼しました。でもメロには死んでもらっては困りますから」


そう言われて思わず顔をあげた。
ニアの顔は、まだ見えないまま。


「何で?」

「………き…、だから」

「え?なんて」


ぐいっと耳をニアの方に近付ける。

パズルの土台越しに聞こえた、ニアの小さな小さな声。


「……すきだから…」


それは確かにそう言った。


「………」


しばらく沈黙が続く。


「……お前…、頭でも打ったのか?」


───ゴッ!!


「いってえッ!」


パズルの土台の角が頭に直撃し、僕はあまりの痛みに思わず声をあげた。


「ニアお前…っ!」

「やっぱり今のは撤去します」

「ちょ、何で…っておい!」


走り去っていくニアの後ろ姿を見ながら、僕はまだじんじんと痛む頭を擦った。




















すきだから

(そんなの当然でしょう?)









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