「ナツのバカ!」

「なっ、バカはそっちだろ!」

「そんなにルーシィがいいなら、ルーシィになっちまえ!」

「…それなんか違くね?」

「うるせぇよ、浮気者!」

「だから浮気なんかしてねーってさっきから言ってんだろーが!」


ギルドの中心で半泣きのグレイと、それに逆ギレしてするナツが激しく言い争う。
そんなのいつものことなのだが、今日は何だか様子が違うみたいだった。


「もういい…っナツなんかだいっきらいだ…!」

「──っ!てめぇ、いい加減にしろよ!!」


とうとう本当にキレたナツが、グレイに殴りかかろうと胸ぐらを掴み、手を振り上げた。
反射的にぎゅっと目を瞑るグレイ。
───だが、いつまでたっても振りおりてこない拳に、グレイはそっと片目を開けた。


「恋人を殴るなんて、感心しないな」


青い眼鏡をかちゃりとなおす仕草をしながら、ナツの後ろから現れた人物。


「ロキ…」

「やぁ、久しぶり」


彼が振り上げられたナツの腕を掴んで、止めていた。
ナツの表情が一気に不機嫌になる。


「何だよ、お前には関係ねぇだろ…」

「残念。それが関係あるんだよねー」


ナツの手を放し、前にいるグレイのもとへ歩み寄るとそのまま片膝をついて座った。


「お怪我はありませんか?お姫様」

「は…?」


わけがわからないと言った様子のグレイの手をとり、ロキはそのまま彼の手の甲に触れるだけの口付けを落とした。


「な…っ」

「──っ!ロキ、お前!」

「僕、グレイのこと好きだし」


時が止まった気がした。
その言葉の意味を理解した瞬間、ナツは血の気が引いていくのを感じた。
グレイ、が…とられる。


「だから丁度よかったよ。ナツ、今フラれてたしね」

「……っ」


更に追い討ちをかけてくるロキに、何も言えなくなる。
だってオレは、グレイを殴ろうとしたのだから。
それを止めてくれたのは、ロキなのだから。
───もし、さっきグレイを本当に殴ってしまっていたとしたら…。
絶対嫌われていた。
今、そうなっていないのは、認めたくないがロキのおかげだ。

確かに、オレも少しは感じていた。
グレイがこんなに取り乱すのは珍しい。
つまり原因は、オレにあるってことを。


「グレイ、」

「な、ん…」

「目、こんなに真っ赤になっちゃって。可哀想に」


ロキが涙でぐしゃぐしゃになったグレイの顔を拭いてやる。
抵抗せずに、されるがままのグレイ。
悔しいけど、オレは“お似合い”だと思った。
ロキは男前で優しいし、グレイは綺麗だし。

オレなんかが邪魔していいわけねぇよ…。


「?ナツ、何処に行くんだい」

「家に決まってんだろ。帰る」


そう言うとロキは意外そうに問いかけた。


「グレイのこと、本当にもらっちゃうよ?」

「……好きにしろよ。その方がグレイも幸せにな…っ」


───パァン、とかわいた音がギルド内に響きわたった。

ひりひりと痛む頬を押さえながら、ナツはゆっくり顔をあげる。


グレイがナツを叩いていた。






















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