反対の反対







「グレイ!ちゅーしようぜ!」

「嫌だ」


話しかけるなりピシャリと断られて、柄にもなく落ち込むオレ。何でだよ!


「じゃあ、ぎゅーってさせてくれよ」

「嫌だ」


はぁあ!?それもナシなのかよ!じゃあ、どうすりゃいいんだよ。
わかるか!?目の前に可愛い恋人がいんのに、抱きつくことすら出来ないオレの気持ち!
そう思って怒鳴ろうとするも、先程からずっと下を向いたままのグレイを気付き、思わず顔をしかめた。


「…どうしたんだよ。何かあったのか?」

「別になんもねぇよ」

「だったらいーじゃんよ!」


顔を上げたグレイに、そう言って抱きつこうと彼の方に腕を伸ばした。
刹那、


「何しようとしてんだ!離れろ!アイスメイク……ッ」

「えええ!何で!?つか、魔法遣おうとすんな!」


伸ばしていた腕を反射的に引っ込め、慌ててグレイから離れるとグレイは魔法を放つのをやめた。


「ったく…何だってんだよ」

「……」

「……なぁ?」

「……」

「オレの事…嫌いなのか?」

「違う!!」

「っ!?…す、すいません」


ずっと黙り込んでいたグレイがいきなり怒鳴り出して、オレはつい謝ってしまった。
あれ、オレなんも悪くなくねぇ?何で謝ってんだ?
それにしてもわからない。グレイがオレに触れられるのを拒む理由。何でそんなに嫌なんだ?


「なぁ、グレ…」

「だって、お前…」


オレが難しい顔をしていると、グレイが気まずそうにゆっくりと話し出した。


「キスするとき、絶対舌入れてくるし…」


みるみるうちに真っ赤に染まっていく頬。


「抱きつくとか言って…へ、変なトコ触ってくるだろ!」


最後の方は、もうほぼやけくそになりながら怒鳴ったグレイ。
だけど、そんな真っ赤な顔で言われても、ただ可愛いだけなんだけど…。


「ぐ、グレ……っ」

「だー!近付くんじゃねぇバカナツ!アイスメイク……ッ」


再度、魔法を遣おうと構えるグレイを見て、ぎょっとする。


「あああっ、わかったわかった!もうしねぇから!」

「……は?」


慌てて言ったオレに、グレイは魔法をやめてきょとんとした。
な、なんだ…?


「べ、別にすんなとは言ってないだろ…」


言いながら寂しそうな顔で、オレの服を少しだけ掴むグレイ。
え、何コイツ可愛い。


「ふ、二人きりのときなら…」


ちらちらと動くグレイの視線。


「し、したらダメってわけじゃ…ない、ような気が…する………の反対…」

「?」

「……の反対」

「どっち!?」

「自分で考えろバーカ!」

「ちょ、おい!」


走って出ていく二人を見送ったあと、ドッと笑いが出るギルド内。


「あいつらいつまでたっても初々しいな、オイ」

「仲が良いのはいいことだ」

「グレイって意外とツンデレだったのねー」

「あい。それがグレイです」


数分後、仲良く手を繋いで二人が此処へ戻ってくることは、まだ誰も知らないだろう。




















反対の反対

(わがままなお姫様だな、本当)









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